J-REIT
(写真=PIXTA)

J-REITには投資対象とする不動産事業によって8つの種類があり、さらにそれぞれに複数の銘柄があります。これからJ-REITをはじめるという初心者の方は、どの銘柄を選ぶべきか、どのようなポイントを見て選べばいいのか、分からないと思います。そこで今回はJ-REITの中でも「住居主体型」の10銘柄に絞って、徹底比較します。


銘柄比較でチェックするポイント

J-REITの銘柄を比較するにあたって、比較できるポイントはたくさんあります。しかしその中でも重要な分配利回りや投資口価格の推移、格付けなどにポイントを絞って解説していきましょう。今回比較するのは以下の10銘柄です。

・積水ハウス・SIレジデンシャル投資法人
・大和ハウス・レジデンシャル投資法人
・日本賃貸住宅投資法人
・日本アコモデーションファンド投資法人
・野村不動産レジデンシャル投資法人
・アドバンス・レジデンシャル投資法人
・スターツプロシード投資法人
・ケネディクス・レジデンシャル投資法人
・コンフォリア・レジデンシャル投資法人
・サムティ・レジデンシャル投資法人

それではこの10銘柄を5つのポイントから徹底比較してみましょう。比較対象としているのは2015年8月31日現在のデータです。格付けはJCR(株式会社日本格付け研究所)のものを参考にしています。


積水ハウス・SIレジデンシャル投資法人

現在のJ-REIT全銘柄の平均分配利回りは「3.46%」ですが、積水ハウス・SIレジデンシャル投資法人の分配利回りは「3.69%」で、平均利回りは上回っていますがこの10銘柄の中では5番目と、特に目を引くところはありません。投資口価格は11万4,800円で、2015年5月以降は下落傾向にありますが、今回比較している10銘柄の中でも低い方です。物件数は110棟でそのうち住居が93%、残りは商業施設などで構成されています。他の銘柄に比べるとわずかですが住居以外の投資物件への投資が高いです。

積水ハウスの強みは、J-REITの全銘柄の中でもっとも平均築年数が短いという点です。平均築年数は「4.72年」で非常に短く、住宅の稼働率は95%と高いです。格付けは「AA−」を維持しています。スポンサーは積水ハウスとスプリング・インベストメントの2社で、信用力が高く資金調達も順調に行なっています。安定的に収益を上げていると言えるでしょう。


大和ハウス・レジデンシャル投資法人

分配利回りは「3.53%」と平均をわずかに上回っていますが、特に高くはありません。投資口価格は「25万2,800円」で、2015年7月からは下落傾向にあります。物件数は「141棟」です。物件の99.2%とほとんどの投資対象が住宅になっていますが、この水準は他の銘柄と比べても変わりません。

大和ハウスの銘柄は、築年数が全銘柄の中でも3番目に浅く「6.14年」となっています。またROE(自己資本利益率)は「6.37%」、含み益は「16.53%」と共に高く、優良銘柄です。東京23区を中心の利便性の高い物件に投資しており、スポンサーである大和ハウスの信用力で長期固定金利主体の安定した資金調達を行なっています。格付けは「AA−」で、利回りに大きな魅力はありませんが、安定的な運用には向いています。


日本賃貸住宅投資法人

分配金利回りは「4.30%」と今回紹介している10銘柄の中では、2番目の高さです。投資口価格は「7万9,000円」で2015年に入ってからは、ゆるやかに下落し続けています。物件数は「199棟」と多く積水ハウスや大和ハウスと違って、首都圏だけでなく全国の物件に投資しています。約45%が関東以外の地域です。

日本賃貸住宅投資法人は大型、築浅の物件に集中的に投資しており、物件の競争力は高いです。ただ有利子負債率がここ10期ほど上昇し続けている点が懸念されます。ただ平均稼働率は97.5%と高く効率的な運営を行なっている点は評価できるでしょう。一時期分配金の低下が問題となりましたが、最近は持ち直しています。


日本アコモデーションファンド投資法人

分配利回りはほぼ平均並みの「3.49%」と平均程度で、投資口価格は「43万4,500円」と高めです。2015年に入ってから長期的には下落傾向にあるものの、大きな変動は少なく安定的に推移しています。物件数は「116棟」と多いわけではありませんが、物件取得額の総計は「2,949億円」と高く、大型物件を対象としていることが分かります。スポンサーが三井不動産開発で信用力は高く、物件の取得競争が高い中でも、一定の取得を継続することができると考えられます。

投資物件の「87.4%」が東京23区、「92.5%」が関東圏に分布しています。首都圏は人口流入や景気持ち直しの影響で不動産需要も高まっており、ほとんどが首都圏の物件であることは今後プラスに働くと思われます。有利子負債比率は高めでレバレッジを高めに設定していることが分かりますが、返済期限は分散しており、総じて見ると長期にわたって安定的に利益が見込める銘柄だと言えるでしょう。


野村不動産レジデンシャル投資法人

分配金利回りは平均以上の「3.63%」で投資口価格は「63万7,000円」と高いですがこれも2015年に入ってから下落傾向ではあります。しかし3年〜5年という長期での推移を見ると一貫して上昇しており、推移は安定的です。投資物件数は「146棟」で総額は「1,622億円」となっています。1つの物件辺りの取得価格は低く、~30代の若年層に向けた物件を販売しています。分散投資効果は高いでしょう。野村不動産ホールディングスが100%株を保有しているため、信用力も高く財務面の懸念は少ないです。そして野村不動産レジデンシャル投資法人の強みは、長期にわたって分配金が安定している点です。突出した大きな魅力はないですが、ポートフォリオに加える価値は充分あると考えられます。


アドバンス・レジデンス投資法人

2010年に誕生した比較的新しい銘柄ですが、分配金利回りは「3.37%」と平均を下回っています。投資口価格は「26万7,900円」で特に2015年7月以降は下落傾向にあります。約70%の物件を東京23区以内に保有しており、物件数は「249棟」、取得物件の総額は「4,241億円」と非常に規模が大きいのが特徴です。含み益が「23.96%」と住宅系のJ-REITの中ではもっとも高い水準にあります。

日本アコモデーションREITなどとは違って、競争的な物件を避けて投資しているため、今後も継続的に物件を取得していくことが考えられまずが、現状でもポートフォリオは非常に分散しています。NOI利回りも住宅系の中では高い方で、キャッシュフローの安定感は注目に値します。


スターツプロシード投資法人

今回紹介している10銘柄の中でもっとも分配金利回りが高いのがスターツプロシード投資法人のREITです。分配金利回りは「4.41%」、投資口価格は「18万400円」です。他のJ-REITと同じく2015年に入ってからは価格は下落傾向にありますが、長期的には成長しています。価格、分配金共に変動は大きいですが、NOI利回りは住宅系の中でもっとも高く「5.93%」です。

物件1戸あたりの取得価格は低く、物件数は「96棟」、物件取得価格合計は「571億円」と小規模ですが今後の成長が期待されます。住宅系の中では安定性には欠けますが、有利子負債率も低くなっており、投資対象としては魅力的です。


ケネディクス・レジデンシャル投資法人

分配金利回りが「3.96%」と住宅系の中では高めで、投資口価格は「30万9,000円」、他の住宅系REITに比べると価格の変動は少なく安定しています。物件数は「103棟」、取得物件の合計は「1,460億円」と並みの規模です。スポンサーは不動産アセットマネジメント会社であるケネディクスで、野村不動産や三井不動産のような大きなパイプはないため、競争的な物件取得には不利ですが、不動産市場での実績は大きいため、外部成長を続けることができています。取得物件数も急速に増やしており、今後の成長が期待できる銘柄です。

NOI利回りも住宅系の中では高い「5.56%」であり、稼働率も安定しています。今後の金利上昇リスクに備えて借入の長期化・固定化を進めており、財務面での安定性は他の銘柄に比べても高いです。


コンフォリア・レジデンシャル投資法人

東急不動産がスポンサーとなっているコンフォリア・レジデンシャル投資法人は、分配金利回りは「3.63%」と住宅系の中では並みで、投資口価格は「23万2,700円」で長期的に見ると安定的に成長している銘柄です。ターゲットは単身者、小家族世帯で都市型の高級賃貸マンションの運営を行なっています。物件数は「95棟」と小規模ですが、高級路線のため取得物件の総額は「1,465億円」と小さくはありません。

特徴は東京23区に特化している点で、地域別で見ると94%が23区以内の物件になっています。首都圏は人口流入や不動産市場の好調の傾向を見せているため、これらのメリットを享受しやすいです。NOI利回りは高く、効率的な運営を行なっています。有利子負債率は住宅系の中でも高いため、今後の金利上昇リスクには注意する必要があります。


サムティ・レジデンシャル投資法人

2015年6月末に新たに上場した銘柄で、分配金利回りは「3.88%」と住宅系の中ではやや高め、投資口価格は「8万9,200円」ですが上場後下落しています。物件数は「28棟」、取得物件の総額は「305億円」とまだまだ小規模です。他の銘柄との違いは、住宅系10銘柄の中で唯一関西圏を中心に投資している点で、今後は全国の主要都市に分散して投資する方針です。物件は単身者や小家族向きの小規模物件で、シングル世帯の増加を見込んだ投資方針のようです。まだ上場されたばかりですので、今後の動向に注目しましょう。


銘柄選択は総合的に

今回は住宅系のJ-REITを10銘柄比較しましたがいかがだったでしょうか。J-REIT市場2015年に入ってからは調整していますが、不動産市場は好調であるため、今後は回復していくことが考えられます。これからJ-REITをはじめるという人の銘柄選択は、今回紹介したように配当利回りやNOI利回りなどだけでなく、総合的に分析して行なうことが重要です。(提供: Leeways online )

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