(写真=PIXTA)
前回はオランダでCDCが生まれた経緯とその後のDAを巡る議論について見てきました。オランダでのDAの動きに少し遅れて、イギリスでも2011年頃からDAを巡る議論が本格化しました。そして、2015年3月に一連の議論を踏まえた年金関連法(Pension SchemeAct 2015)が成立しています。
DBの衰退が進む一方で、DCの普及が思ったほど進まないこと、さらにはその積立水準が低水準に留まっていることが背景にあります。こうした中で、イギリスが目指すDAはどのような内容なのでしょうか。DBの伝統を残すオランダが目指すものと同じなのか。
第三回目の今回は、イギリスの企業年金がどのように変化し、そこにおけるDAの位置付けを整理してみます。
改革が続く年金制度
イギリスの年金制度は、公的制度である基礎年金(BasicStatePension)の上に多様な2階部分の制度が乗っています(図表1)。
長い間に様々な制度変更を行ってきた結果、イギリスの年金制度は複雑なものになりました。例えば、基礎年金に最低所得保障機能を付加する年金クレジットや、公的年金の2階部分にあたる第二年金(Second State Pension)、更にその適用除外制度(他の2階部分による代替を認める仕組み)等々です。
このため、国民にとってすら年金制度は分かりにくく、老後の備えをすることの障害にもなっているとの指摘がありました。そこで政府は、2014年に新しい年金制度の導入方針を決定し、これにより2016年から公的年金の一層化(基礎年金と第二年金の統合)が進むことになりました。統合後の給付水準は、現行の基礎年金より高めの水準に設定される模様です。
また、一層化によって消滅する第二年金だけではなく、他の2階部分についてもここ数年の間に大きな動きがあります。その一つが2012年から始まった職域年金の自動加入制度、そしてもう一つが2015年に関連する法律が成立したDAの導入です。
前者は職域年金への加入促進を狙って導入されたもので、企業に対して、その従業員を一定の条件を満たす職域年金に加入させることを求めるものです。この制度の効果を高めるために、NEST(National Employment Saving Trust)という運営機関も設置されました。これらに関するレポートも多数出ていますので、ここでの詳しい説明は省略します。