9月相場も折り返し地点を過ぎた。中国経済の先行き不安はくすぶるものの、一時の需給波乱は沈静化しつつある。投資尺度も正常な機能を取り戻すとみられる中、目先に迫った9月配当の権利取りへ向け、配当利回りが注目されそうな局面だ。

3月期決算企業の9月中間期配当の場合、9月25日が権利付き最終日に当たる(28日に権利落ち)。ここへ向かって、配当利回りの高い銘柄には権利取りの買いが流入しやすい。今回は、全体相場の調整に紛れて株価水準が低下(利回りは上昇)しているものが多い分、投資妙味は高い。

別表では9月中間期配当を実施する東証1部上場株式のうち(1)年間配当利回りが2.5~3.5% (2)PBR(株価純資産倍率)が市場平均(約1.3倍)を下回る(3)13週移動平均線とのマイナスカイ離率10%以上-の3条件に当てはまる主な銘柄を掲載した。三菱ガス化学 <4182> 、荒川化学工業 <4968> 、キトー <6409> あたりが面白そうだ。

菱ガス化は所有期間利回りに妙味、株価「3割高下に付け」局面

菱ガス化は今3月期9月中間期末に8円の配当を実施する(年間では16円)。いわゆる所有期間利回りで見ると、魅力的な銘柄だ。6月高値761円からの2段下げによって9月7日に527円まで下落。下落率は30.7%に達し、相場格言でいう「3割高下に付け」の局面にある。

13週移動平均線からのマイナスカイ離率は13.8%と、今年1月安値(512円)当時に匹敵する高水準を記録。しかし、0.6倍台というPBR(株価純資産倍率)、PER8倍、足元の業績堅調を踏まえると、短期的には売られ過ぎの印象がある。

原燃料安によるマージン改善、円安効果、JSP <7942> の連結子会社化などによって、4~6月期の連結営業利益は75億8500万円(前年同期比2.41倍)となり、通期予想250億円(前期比66.7%増)に対する進ちょく率は30.3%。現在の調子でいけば通期計画は余裕含みのラインになろう。

荒川化学は悪材料織り込む、PBR0.4倍台で出遅れ

荒川化学のPBR(株価純資産倍率)0.4倍台、PER9倍で配当利回り2.7%の株価は出遅れが顕著だ。

同社は製紙用薬品、印刷インキ用樹脂の最大手。株価は今3月期第1四半期(4~6月)が減収減益になったことで急落し、その後調整が続くが、その要因は既に解消し、第2四半期(7~9月)は回復色を強めている。

利益をけん引していた欧州における紙おむつ用などホットメルト接着剤「アルコン」の連続生産プラントの停止による機会ロスが減収減益の主因だが、需要は旺盛で設備は短期間で復旧。

また、1Qにはスマートフォンのハイエンド機種以外への対応を進めたことで光硬化樹脂など「電子材料事業」の営業損益は800万円の赤字(前年同期は4600万円の赤字)へと改善している。通期の予想連結営業利益37.5億円(前期比26.6%増)の達成は少しハードルが上がった印象だが、それは十分過ぎるほど株価に織り込まれている。中・長期妙味を増していよう。

キトーは海外進出で再評価へ、PER8倍で底打ち感

チェーンブロックやホイスト(巻上機)を手掛けるキトーの株価は、8月13日の直近高値1274円から9月7日には901円まで売られるなど全般市場の大幅下落で30%近い調整を余儀なくされた。ただ、今3月期の連結営業利益予想は55億円(前期比62.0%増)と大幅増益見通し。年間配当予想は28円(9月中間期末14円、期末14円)と配当利回り面でも注目される。株価は足元で底打ち感も出ており、水準訂正の動きが期待される。

今期はアジアでの景気減速の動きを前期に買収した米ピアレス社がカバー。今後も米国での現地生産の拡大など相乗効果が表面化してくる。日本でも民間設備投資向けの需要が出ており、建築土木工事向けの需要も出ている。一方、株価指標面ではPERは8倍台と、海外市場で積極展開が進む中、評価不足の水準だ。(9月15日付株式新聞掲載記事)


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