ASEAN諸国の国際競争力
◆貿易面から国際競争力を表す2つの指標
次にASEANの「産業の国際競争力」の変化を捉え、1980年以降の変化を見ていく。産業の国際競争力といっても労働生産性や輸出入価格、市場シェアなど様々な評価方法があるが、本稿では「貿易の偏り」から捉える①比較優位・劣位、②貿易特化係数の2種類の指標を用いて評価する。
比較優位・劣位は、顕示比較優位指数(RCA:RevealedComparativeAdvantage)、顕示比較劣位指数(RCDA:RevealedComparativeDisadvantage)、顕示貿易統合比較優位指数(RTA:RelativeRevealedComparativeTradeAdvantage)の指標があり、以下の式(1)~(3)で表すことができる。
まずRCAijは、j国におけるi財の輸出が世界対比でどの程度優位であるかを表し、RCAが0より大きいほど比較優位の度合いが高いことを示す。またRCAijは、j国におけるi財の輸入が世界対比でどの程度劣位であるかを表し、RCDAが0より大きいほど比較劣位の度合いが高いことを示す。
そして、RCAijは輸出側の比較優位を示すRCAijから輸入側の比較劣位を示すRCAijを差し引いた指数であり、j国のi財の輸出が比較優位でも、i財の輸入が比較劣位の度合いが大きい場合、RCAijは比較劣位となる。なお、RCAijの値は0よりも大きいほどj国のi財の世界全体に対する比較優位の度合いが大きく、0よりも小さいほど比較劣位の度合いが大きいことを表す。
次に貿易特化係数(TSI:TradeSpecificationIndex)は、以下の式(4)のとおり貿易収支を貿易総額で割り引いた指数である。従って、RCAijの値は▲1~+1の範囲内を取り、0を境に1に近いほど輸出競争力が高く(輸出に特化)、▲1に近いほど輸出競争力が低い(輸入に特化)ことを表す。