(写真=PIXTA)
六本木ヒルズや丸ビルに入居している成長企業、これらの企業は本社を自社ビルにせず賃貸している。経営者であれば憧れる立派な自社ビルは、今や幻想なのであろうか。歴史ある老舗企業は、今でも一等地に立派な自社ビルを構えているケースが多い。
しかしながら最近では自社ビルを建てると会社が傾くという警笛まで鳴らす人達もいる。自社ビルを持つか持たざるべきか、企業にとって深いテーマと言えそうだ。そこで、今回は自社ビルのメリットとデメリットについて触れてみよう。
持つことによる財務面の影響
まず自社ビルを保有した時の財務面の影響を考えてみる。企業の業績を表す決算書には損益計算書と貸借対照表が存在する。自社ビルの保有が損益計算書に与える影響は、家賃の支払いが無くなる一方で、固定資産税の支払いや減価償却費が発生するということである。借入金を用いて購入した場合は支払利息も増加する。
一般的には固定資産税と支払利息増加分よりも家賃の方が大きいため、キャッシュアウトは抑えられる。また減価償却費は内部留保され節税効果も生むため、損益計算書上はメリットの方が大きいと言える。
ところがこれが貸借対照表上では、資産の部に自社ビルの土地建物が計上されるものの、購入のための借入金が増えるか現預金が減るということになってしまう。売上が増えなければ有形固定資産回転率が下落するため効率性は劣ることにもなる。貸借対照表上はデメリットの方が大きいと言えそうだ。
持つことによる営業面への影響
次に営業面への影響を考えてみる。自社ビルを保有することで、顧客や銀行への信頼が高まる可能性はある。またセキュリティーや看板の掲示等、自分たちの営業がしやすいようにビルを自由に設計することができるため、賃貸ビルでは不可能な快適性を享受できるのはメリットと言えよう。
しかしながら、主要顧客が移転しても自分たちは移動できなかったり、従業員が増えてきた時に周辺ビルを借りざるを得ないなど、機動性や拡張性に劣ることになる。企業の経営環境は常に変化するため、例えばリーマンショックや東日本大震災等の激変が立て続けに生じることもあり得る。その際、変化への対応力が劣るということは、デメリットに繋がってしまう。ただし、業績が極端に落ち込んだ場合、売却できる自社ビルを持っていれば、それを売却して回復を図るきっかけが作れるという側面もある。
デメリットが大きくなる理由とは
このように企業が自社ビルを持つことにはメリットとデメリットがある。そのため企業の今後の業績見込みや自社ビルの必要性について総合的に判断したうえで購入する必要がある。
ただ一つ言えるのは、身の丈を超えた自社ビルを保有してしまうと、途端にデメリットの方が目立ち始めるということだ。借入金の返済が大きすぎる状態や、手持ちの現預金が常にギリギリの状態になってしまうと苦しい経営になってしまう。これを避けるためには、自社ビルの購入総額そのものを抑える必要がる。
区分所有ビルならデメリットを抑えられる
購入総額を抑えながら、自社ビルのメリットを享受する方法として、一棟のビルではなく区分所有ビルを購入するという手段がある。
区分所有ビルは立地が良い物件が多く、割安感もあり購入総額も抑えられるため、財務面に与える悪影響が少ない。機動性や拡張性と言ったデメリットは残ってしまうが、立地の良い物件であれば、売却や賃貸への転用も可能だ。
また下手に小さな一棟ビルに手を出してしまうと、将来望まない再開発に巻き込まれ、拠点を移らざるを得ないと言った例もある。区分所有ビルであれば、既に再開発済みの物件が多いため、そのような心配もない。
自社ビルは購入額を抑えることが重要
以上のことから、必ずしも自社ビルを建てたから会社が傾くというわけではなく、金額の大きすぎる自社ビルを持てば経営を圧迫するという理解の方が適切であろう。自社ビルを購入するなら、まずは割安感のある区分所有ビルを検討してみるべきと言えそうだ。(提供: Vortex online )
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