中央と地方財政の役割分担

◆社会保障は地方財政が主に担当

2014年の一般財政支出15兆1785億元(日本円では約300兆円、前年比8.3%増)の内訳をみると、中央財政による支出が2兆2570億元(10.2%増)、地方財政からの支出が12兆9215億元(7.9%増)となっている(*2)。

中国の財政支出の大きな特徴の1つとして、中央財政が支出合計の15%程度にとどまるなど、地方財政よりも大幅に小さい点がある。その理由は再分配を背景とした中央から地方への財政移転にあり、2014年は合計5兆1591億元が移転されている。また、中央・地方財政が、主に何に支出されているかに着目すると、中央財政は主に国防や公共安全といった国内外の治安や国民の安全確保等、「国が責任を負うべきこと」について多くが支出されていることがわかる。

一方、地方財政は、社会保障や教育、産業等、「国民の生活にかかる社会サービス、経済活動」に多くの支出を割いている。つまり、中国では、中央と地方が財政においても役割分担をしているのだ。

2014年の一般財政支出において、最も大きい割合を占める項目は、社会保障関係費(割合は17.2%)である。これは、地方財政の支出においても同様である(割合は19.6%、支出額は2兆5356億元)。

中国の社会保障関係費 図2

◆地方と中央財政の実質負担割合は6:4

中国において、社会保障に関する経費をみる上では、中央からの財政移転の内容とそれを含む地方財政支出の内容を確認する必要がある。まず、2014年の中央から地方への財政移転(5兆1591億元)は、一般性移転支出(4兆6509億元)と特別移転支出(1兆8941億元)の大きく2種類に分けられる。

一般性移転支出は、日本の地方交付税に相当するものである。一般性移転支出には、社会保障関係費として、①年金および生活保障制度の負担金、②都市の非就労者・農村住民を対象とした医療保険の負担金が含まれている。

一方、特別移転支出は日本の特定補助金に相当するものである。ここでは、社会保障関連費として、社会保障・就業の項目から、③身体障害者や就業対策等への負担金、医療衛生・計画出産の項目から④公共衛生サービス等の補助金が含まれている。

2014年の社会保障関係費①~④の合計は、9207億元であった。これは、2014年の地方財政における社会保障関係費の36.3%を占めていることになる(図表3)。つまり、地方政府が社会保障の給付を主に担っているが、実質的には、およそ4割を中央による財政負担に頼っていることになる。

中央からの財政移転支出についても、その中身に変化がある。2011年頃より、社会保険における年金や医療保険の国庫負担金を中心とした一般性移転支出が大幅に増加する一方、就労対策、公衆衛生サービスを中心とする特別移転支出が縮小しているのだ。社会保障に関する地方財政と中央の財政負担割合は概ね6:4で推移しているが、地方、中央ともその支出額は急速に増加している。

中国の社会保障関係費 図3