Altman Z ScoreモデルとAccruals Ratioの関係
◆Altman Z Scoreモデルとは
信用リスク評価においてよく用いられるAltman Z Scoreモデルと本レポートで提案したAR Scoreの関係について考えたい。一般に、Altman Z Scoreモデルとは以下の5つのファクターを用いて企業
の信用リスクを計測するモデルのことを指す。
Z=1.2×F1+1.4×F2+3.3×F3+0.6×F4+1.0×F5
(1)流動性指標:F1=[運転資本]/[総資産]=([流動資産]-[流動負債])/[総資産]
(2)収益性指標:F2=[剰余金]11/[総資産]
(3)収益性指標:F3=[営業利益]/[総資産]
(4)レバレッジ:F4=[株式時価総額]/[負債総額]
(5)回転率:F5=[売上高]/[総資産]
Accruals Ratioと同様の方法でBloombergより財務データを収集し、Z Scoreを計算する。会計制度の差異、地域や業種による特殊性があるとは考えられるものの、一般的にZScoreが3.00以上であれば「健全な企業」、1.81よりも小さいときは「倒産状態または倒産に向かっている」と判定される(*12)。
◆Altman Z ScoreモデルとAR Scoreの関係
Altman Z Scoreモデルを使用する場合、これらの5つの財務指標が企業の信用力を正しく反映していることが前提となる。よって、企業によって財務諸表を「良く」見せるための利益調整が行われている場合には、このような指標を用いた信用リスク分析では、分析対象の企業において信用力の悪化をうまく捕捉できない可能性がある。AR Scoreを用いることでこのような問題点が解決できるかどうか検証してみたい。
AltmanのZ ScoreとAR Scoreとの関係(散布図)を示したのが図表16、図表17である。倒産企業であっても直前の会計期末において、比較的高いZScoreを持つことがあることが分かる。しかし、倒産企業のAR Scoreは非倒産企業のそれに比べて絶対値が大きいことから、Z Scoreでは判定できない水面下の信用リスクの悪化について検知できてきていることになる。
また、負のZ Scoreを持つ倒産企業は負のAR Scoreを持つ傾向があることも分かる(第3象限)。負のZ Scoreをもつ企業はすでに信用力の悪化が顕在化していることから、債権者や株主から企業活動のリストラクチャリングが求められることが多いことも大いに関係しているものと思われる。