◉Facebook第1四半期決算:キャッシュフロー計算書
次に図3のキャッシュフロー計算書を見てみましょう。
営業キャッシュフロー(Net cash provided by operating activities)は7.19億ドルから12.85億ドルに増えています。営業キャッシュフローがプラスであり、かつ、増えている事は本業が順調である場合が多いです。実際、ユーザー数の増加や利益の増加など本業は順調であり、この点に特に疑問はありません。
投資キャッシュフロー(Net cash used in investing activities)は-3.26億ドルから-18.72億ドルに減っています。Purchases of property and equipment(有形固定資産の購入)とPurchases of marketable securities(市場性有価証券の購入)がマイナスの主たる項目で、逆にプラスになっているのは市場性有価証券の売却等が該当します。投資に積極的な企業はマイナスである事が多く、有形固定資産の購入もFacebookのような企業であれば自然ですし、有価証券の購入も基本的には企業買収の結果なので、これも投資の一部です。
財務キャッシュフロー(Net cash (used in) provided by financing activities)は-4.44億ドルから2.62億ドルに増えています。債務自体は継続的に償還出来ていますし、プラスの要因は税務上の超過利益なので、それほど心配する材料は見当たりません。
フリーキャッシュフローは、3.93億ドルから-5.87億ドルになっています。企業が自由に使える資金を確保出来ていない点は懸念事項ですが、積極的な投資を業績に転化出来れば、キャッシュフローを確保する事が可能でしょう。
図3:Facebookのキャッシュフロー計算書
◉Facebook第1四半期決算:本業の動向
財務面・収益面では大きな問題は見られないので、次はメインコンテンツとしてのfacebookの動向を見てみましょう。
最新の決算書では、
日当たりデイリーアクティブユーザー数(DAUs)は802万人で1年間で21%増加
と極めて好意的な印象で書かれていますが、このデイリーユーザー数を図4の時系列で見てみましょう。世界のアクティブユーザー数は増加しているのですが、その増加率は段々と小さくなってきています。2013年Q4と比較して「大幅に増加した」とするレポートも散見されますが、Q1で増加率が高いのは過去の傾向から見て「季節変動」と考えるのが妥当です。今回の決算を「驚くべき好決算」と見ている人が少なからずいるわけですが、この季節変動を考慮すればQ1の業績が良いのは当然と言えば当然で、もっと冷静に業績を見る必要があると思われます。なお、月間のアクティブユーザー数(MAUs)も同様の傾向が見られます。
図4:facebookの1日当たり世界デイリーユーザー数の推移
出典:2013Q4まではFacebook Annual Report 2013、2014Q1はFacebook Reports First Quarter 2014 Results
もう一つ注目すべき点は「モバイルユーザーの動向」です。同決算書によると、デイリーアクティブユーザーのうちモバイルによる利用者は609万人で、デイリーアクティブユーザーの75.9%はモバイル利用という実態になっています。2014年Q1において売上高のうちモバイル広告によるものは約59%であり、2013年Q1よりモバイル広告による売上高は約30%増加しています。
75.9%のアクティブユーザーに対して、売上高は59%となっているので、モバイル広告の収益性はPCより悪いという事になります。
◉Facebookの現状と今後の動向
現状の業績や財務状況はフリーキャッシュフローの点を除けば、良好であると言って良いと思います。図5のFacebookとS&P500のリターンを比較しても、最近のFacebook株の収益率は高く、その高い業績と財務の健全性が高く市場に評価されていると見て良いでしょう。現状がバブルとまでは言いませんが、市場に公開されている情報は概ね価格に織り込まれていると考えるのが普通なので、今後どうなるかを考えなければなりません。
図4:FacebookとS&P 500のリターン比較
出典:REUTERS
アクティブユーザーが増え続けているとは言え、その成長率は鈍化しており、その伸びは新興国でのユーザー数の伸びに支えられており、米国やカナダではその伸びが殆ど止まっています。一方で広告収入は依然として米国・カナダ・ヨーロッパからが多く、2013年Q1のデータでは、
・米国、カナダ:10.68億ドル
・ヨーロッパ:6.58億ドル
・アジア:3.18億ドル
・その他:3.00億ドル
となっています。米国・カナダ・ヨーロッパの合計アクティブユーザー数が4.83億人に対し、アジアとその他の合計アクティブユーザー数が7.44億人となっており、
アクティブユーザー数:米国・カナダ・ヨーロッパ < その他
広告収入:米国・カナダ・ヨーロッパ > その他
となっており、米国などに比べてアジアその他における収益性が低い事を意味します。現状は米国でも広告収入が増加傾向にありますが、ユーザー数の増加が停滞しているので、どこかで頭打ちになるか、新興国ユーザーの割合増加によって収益性が悪化する可能性があります。また、facebookユーザー加入の季節性を考慮すれば、2014年Q2の業績はQ1より悪い可能性があるので、短期的な反動も見られる可能性もあります。
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参考文献
[1]
Facebook Annual Report 2013
[2]
Facebook Reports First Quarter 2014 Results
[3]
REUTERS
BY たけやん:経済学修士号取得後、株価推定事業・研究を行っている
Photo:Facebook HQ, by estonby marcopako