商談成立
(写真=PIXTA)

2015年は「業界再編時代」といわれており、あらゆる業界で再編が進んでいる。それと共に進んでいるのが「業界再編型」M&Aである。

M&Aといえば、過去報道されてきた大企業の派手な買収劇というイメージを強く持っている人も多いだろう。しかし、日本で当時行われていたものの99%が友好的なM&Aであり、敵対的買収は数件だったようだ。2000年代後半からは後継者不在問題を抱えた経営者によって事業承継の有効な手段としても行われるようになった。M&Aによって得られる会社の存続・創業者利益の獲得・社員の雇用の維持・重圧からの解放といったメリットが認識される中で、M&Aは積極的な企業の成長戦略として考えられるようになった。単独での成長の限界を判断し、戦略的に売却を始める企業が増えることで「業界再編型」のM&Aの機運が高まってきたのである。

株式会社日本M&Aセンターのナンバーワンコンサルタントとして70件を超えるM&Aを成功に導いてきた渡部恒郎氏の著書『「業界再編時代」のM&A戦略 No.1コンサルタントが導く「勝者の選択」』では、近年増えている「業界再編型」のM&Aについて詳しく解説されている。「業界再編型」M&Aでは、業界の流れを見て戦略的に売却を行い、売却後も企業の発展を遂げることが可能である。


会社の「ベストの売り時」とは

会社の売り時は業界の「成長期」から「成熟期」である。業界内の上位企業のシェアが約10%となる「成長期」に入ると中小・中堅企業から業界再編が始まる。この段階では、大手企業が中小・中堅企業の買収を行うほか、中小・中堅企業同士が持ち株会社を設立して規模の拡大と体力の増強を図る。売り手市場のため高値がつくことが多い、会社の売り時だ。上位10社のシェアが約50%に達すると「成熟期」となる。大手企業が中小・中堅の上位企業の買収を行うほか、地域ナンバーワンクラスの中堅上位チェーンの再編などが起こり、業界再編がピークを迎える。

これらの時期が中堅・中小企業が業界再編の波に乗り、競合連合に入り込む最後のチャンス。自社業界がどのような状況に置かれているのかを再度確認したい。


資本と経営は別と考える

中小・中堅企業の経営者は資本所有と経営は同じ人間がすべきだと混同しているケースが多いが、資本と経営は分離することができる。

自社の業界が再編のピークに近づいた時にM&Aを行う社長も多い。資本となる株式を大手企業に譲渡し、経理や採用も親会社に任せ、自らは子会社の社長や役員として経営に専念するのだ。

また、優良企業のオーナー経営者の中には資本を売却し、経営サポートを受けながら新たなビジネスに取り組む姿も見られる。オーナー経営者が親会社の担当役員になることもあり、30代、40代でも資本にこだわらず大きなビジネスをしたいと考える経営者が大手企業への売却を早々に決断することもある。


専門家の力を借りて会社の現状を把握する

M&Aを行う売り手企業は自社をできるだけ高く売りたいと考えるが、自社の価値を明確にせず値付けを行い相手に値段を尋ねる状況になりがち。対する買い手企業も会社の中身と本当の価値を把握しきれないまま契約が交わされることがある。数字に強い経営者でも、自社の価値を正当に判断することは難しく、客観的に自社の状況を把握するためには専門家の経験と知識を借りるのが良い。専門家のアドバイスによって膨大な企業の中から適切な相手先を選べるようになり、売り手と買い手のマッチングも可能になる。

以前は買い手が仕掛けることが多かったM&Aだが、今は時期を見て、より良く交渉できるタイミングで「売り手から仕掛けるM&A」へと移り変わっている。

地方銀行の再編も本格的にスタート。今後は地方のお金とモノの流れが大きく変わり、地域での企業の再編も一層活発化すると考えられる。この他、「調剤薬局業界」「IT・ソフトウェア業界」「住宅・不動産関連業界」などは現在最も再編が活発化している業界で、書籍内でも現状と今後の動きについて記載されている。

本書では、業界再編時代のM&Aで中小・中堅企業経営者が取るべき選択と方法について、M&Aコンサルタントとして多くの事例を見てきた著者の視点で伝えられている。賢い経営者たちにも是非手にとって頂きたい1冊だ。

『業界再編時代のM&A戦略 No.1コンサルタントが導く「勝者の選択」』/渡部恒郎 著

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