④確定申告が必要〜住宅取得資金贈与
住宅取得等資金の贈与税の特例とは、住宅を購入するための資金を直径尊属から贈与される場合、一定の金額について非課税となるという制度である。さらに、適用を受ける住宅が省エネルギ―対策や耐震対策などをしている場合、非課税限度額がさらに500万円上乗せされる。
### 【2015年以降の非課税限度額】
2015年 1000万円(1500万円)
2016年1月~9月 700万円(1200万円)
2016年10月~29年9月 2500万円(3000万円)
2017年10月~30年9月 1000万円(1500万円)
2018年10月~31年6月 700万円(1200万円)
(注)括弧内の金額は、省エネ住宅等の場合
適用要件は、①受贈者側からみて、贈与者側が直系尊属であること②受贈者の年齢が贈与を受けた年の1月1日において満20歳以上であること③受贈者の年間所得が2000万円までであること④贈与を受けた年の翌年の3月15日までに住宅を取得し居住すること(見込みも含む)⑤受贈者が日本国内に住所を有していること―ーである 。
この制度を利用する場合には、贈与税額がゼロであっても確定申告が必要となる。
⑤1回しか受けられない〜居住用不動産の配偶者の特例
居住用不動産の配偶者の特例とは、婚姻期間が20年以上にわたる配偶者間で、居住用不動産や居住用不動産を取得するための資金の贈与が行われた場合には、2000万円までなら贈与税が非課税になるというものである。適用を受けるためには申告が必要であり、贈与された年の翌年の3月15日までに贈与された居住用不動産または贈与された金銭で取得した居住用不動産に居住し、かつ、その後も引き続き居住する見込みであることが必要である 。
この特例のよい点は、当該居住用財産等については、相続発生前3年以内の贈与であっても「生前贈与加算」の対象に含まれないということである。2000万円もの金額が贈与税も相続税も課税されないというのは大きなメリットといえる。当然のことながら、特例を受ける旨の申請をしないと一般の贈与として扱われることになるので、注意が必要である。また、この特例は1回しか受けられない。
⑥よく考えないと節税にならない〜相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の推定相続人である子や孫への贈与で、通算2500万円までは相続税を課さないというものである 。ただし、「相続時精算」とあるように、2500万円までは贈与税は掛からないものの、相続時点では贈与額を相続財産額に含めなければならず、相続財産の先取りをしているにすぎない。したがって、基本的に相続税の節税にはならない。
では、なぜこの制度があるかというと、暦年贈与の基礎控除額110万円という縛りがあることで、多額の贈与が行われず、いわゆる富の偏在が生じており、それを解消させるためにこの制度を創設したのである。要は、高齢者のところに貯まっているお金を早めに子や孫に贈与させることでお金を使ってもらいたいということだ。
なお、この制度を受けるためには、相続時精算課税の選択届を税務署に提出する必要がある。この届出をした場合、暦年課税には戻れなくなる。以上のことから考えると、相続税が発生する可能性がある人はこの制度を使うメリットはない。逆に、相続税が発生する可能性がない場合には、相続時まで財産の移転を待っている必要はなく、財産を移転できるのでメリットは大きい。特に、値上がりする財産や収益を生む財産を保有している場合、年月と共に資産額が増えるので、早めに贈与することで相続財産額を固定化することができる。
このように、各種の特例があり、どの制度を利用すればよいのか判断は難しい。選ぶべきポイントとしては、贈与金額よりも資金使途の自由度を優先するか、資金使途は制限されても多額の贈与を受けたいかで判断するということである。(ZUU online 編集部)