今のところ、アベノミクスの恩恵を受けているのは大手企業のみ

先日発表されたGDP速報は2期連続のマイナス成長と実体経済の弱さを露呈した。

消費税引上げ、中国をはじめとする海外経済の不安定など理由はいろいろ取り沙汰されるが、アベノミクスとの関連で見れば、円安、株高という第一の矢の効果が薄れ始めたこと、これまでに見られたその効果もトリクル・ダウンするまでには至っていないことがその背景と言えるだろう。

このことは以下二つのデータからも推し量られる。

まずは日銀が10月1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業非製造業では訪日外国人の増加などを背景にプラス25と、前回から2ポイントの改善となったものの、同製造業ではプラス12と前回の6月調査から3ポイント悪化した。悪化は3四半期ぶりだ。

他方、中小企業では製造業が横ばいのゼロ、非製造業は1ポイント悪化のプラス3と大企業に比べると厳しい業況判断となっている。さらに、3カ月先のDIは大企業、中堅企業、中小企業のいずれにおいても悪化と見通しは重苦しい。

もう一つ、4-6月期法人季報(財務省9月1日発表)で売上高の推移を見ると製造業、非製造業を問わず、大企業は2015年1-3月期(消費税引き上げ直前)を除き増収を維持。これに対し中小は2013年4-6月期以降ほぼ減収続きとなっている。

経常利益でも、大企業は製造業、非製造業ともに、増益基調を維持しているのに対し、中小は製造業を中心にここ数四半期、減益が目立つ。

最も規模別格差の目立つのが従業員給与の前年同期比伸び率だ。大企業では2014年4 - 6月期以降ほぼ毎期前年比プラスを続けているが、中小・中堅では対照的にマイナスの連続が常態化している。

こう見てくると、大企業の収益と給与(それも正規社員)だけがアベノミクスの恩恵を被り、そこからのトリクル・ダウンは今のところ生じていないと見るのが妥当だろう。


必要なのは「クロダノミクス」に頼らぬ積極的経営姿勢

結局のところ、第三の矢(成長戦略)でこそアベノミクスの真価が問われる。それを承知で政府も躍起となって「一億総活躍」「日本再興戦略」といった掛け声をかけているが、これに第一に応えるべきは笛吹けど踊らぬ大企業のリーダー達だろう。

黒田総裁頼みの「クロダノミクス」に胡坐をかいているのではなく、真の企業家精神に根差した積極的経営に挑戦するという姿勢の変化が今こそ必要と言わねばならない。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
・家計簿をつけない「どんぶり勘定」の妻に、これ以上家計を任せるべきか?
・「世界MBAランキング」国内1位 東大や京大、慶應ではなく新潟のあの大学
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・日経新聞/日経MJから、四季報まで全てネットで閲覧可?その意外な方法とは
・世界が認めた日本車!「最も価値の高い自動車ブランド ベスト10」頂点に輝いたのはあの日本ブランド?