IPO,ビジネス,新規上場
(写真=PIXTA)

リーマンショック以降、IPO(新規上場株式)数は、順調に伸びている。最盛期の1割ほどだった上場社数が今年は5割まで戻し、約100社の上場が見込まれている。なかでも、12月は上場数も多く、今年は、19社がIPOを控えている。

IPOが盛んになると儲かる周辺ビジネスとは?
上場するにあたり、企業はメリットもデメリットも享受する。メリットとしては、資金調達の簡便性や知名度の向上、業務の拡大などが挙げられる。

「未上場企業によるIPOの動機と上場後の企業パフォーマンス」(細野薫、滝澤美帆著)によると、IPOをした企業は、その後、非IPO企業に比べて、設備投資比率、研究開発費比率、ROA(経常利益/総資産)、労働生産性、および雇用を有意に増加させているという。

一方、デメリットとして、人員不足やコストの上昇、機動性の鈍化なども挙げられる。それらを加味し、IPO上場から派生して儲かるビジネスに注目した。

求む!人財!

前述したとおり、IPOを決めた段階から上場後も、必ず必要となるのは人手である。上場準備に入ると、経理や財務をはじめ、就業規則や社内ルールなど整備や厳格化求められる。上場審査の準備である公開準備指導や公開審査、株式の引き受け・販売は主幹事証券会社、会社の財務諸表の適正さや企業経営の継続性の証明は監査法人が行う。

だが、彼らとの折衝や上場までのリーディング、または、税法ベースから企業会計ベースに移行したり、内部監査室を設置したり、コンプライアンス順守のための研修を実施したりと、他にもやらなければならないことが次から次へと発生する。社内で出来る人がいれば問題ないが、IPOは大企業や老舗企業でなくても上場できるのがウリである。

2014年~2015年のIPO上場企業のうち、約5割が100人以下の従業員であることを鑑みても そのような人材をあらかじめ採用しているもしくは、育成している企業は稀だろう。

そこで、求められるのが、中途採用や、業務を代行してくれるコンサルタントのようなサービスだ。人材募集であれば、人材情報サービスのポータルサイト「リクナビ」を運営するリクルートホールディングス <6098> 、エン・ジャパン <4849> 、または、新聞や雑誌のの求人広告や、派遣会社、人材紹介会社がある。

IPO後に設備投資や研究開発を拡大する企業が多いことを踏まえても、更なる人材確保は必須だ。それなら、当然のごとく、IPOが盛り上がれば盛り上がるほど、人材ビジネスにも影響があるといえよう。

口座数増のネット証券も期待

11月4日、調達金額合計が1兆4362億円(手数料控除前)となった日本郵政 <6178> とゆうちょ銀行 <7182> 、かんぽ生命保険 <7181> の3社が同時に東京証券取引所へ上場した。NTTドコモ < 9437 > 以来、17年ぶりとなる大型上場である。

公募前から、インターネット上では、IPOが当選しやすいネット証券の比較や口コミが飛び交った。実際、各証券会社の口座開設に対する資料請求が前年度の数倍になり、ネット証券でも口座開設数が2倍となる現象が続いたという。

正確なデーターはこれから公表されるだろうが、既に、インターネット取引口座数は、リーマンショックの2009年以降、3~8%増(日本証券業協会)と順調に伸びている。

インターネット取引ができるネット証券は、6月2日現在、61社ある(日本証券業協会)。そのうち店舗を持たず、人件費も安く抑えられるインターネット専業の証券会社では、1割ほどで、SBI証券(SBIホールディングス <8473> )や楽天証券(楽天 <4755> )、マネックス証券( マネックスグループ <8698> )、松井証券 < 8628 > 、カブドットコム証券 <8703 > が大手と呼ばれている。

これらは手数料を低く抑え、個人顧客との取引量(回転数)で収益をかせぐ。それ故、IPOが増え、郵政のような大型案件が出れば、株式の売買が一層増え、ネット証券の収益は上昇すると考えられる。

今後IPOを控える大型案件

今後、IPOを控えていると思われている大型案件は、「LINE」「ユー・エス・ジェイ」、「ヨドバシカメラ」といわれている。

無料通信アプリで有名な「LINE」は、韓国の検索最大手「ネイバー」を親会社にもつ。2014年に続き、今年も新規株式公開(IPO)計画を断念しているが、来年こそはと投資家の期待も大きい。

「ユー・エス・ジェイ」は、ハリーポッターのアトラクションで大化けした大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営している。今では、東京ディズニーランドもしのぐ勢いであるが、実は、2009年に上場廃止をしており、再登板だ。

「ヨドバシカメラ」は、全国に21店舗を展開している家電量販店だ。家電販売店業界の上位5つに食い込んでいるが、今年は、業界トップのヤマダ電機 <9831> が2カ月間で57店を一斉に閉鎖し、大きな波紋を投じた。だが、その一方で、海外の観光客が殺到し、爆買いの対象となっているのも家電である。「ヨドバシカメラ」の今後の業績には注目したい。

大型IPOの上場で証券会社が潤い、それに伴い、投資家が潤って株式市場がますます活気づく2016年であることを期待したい。 (ZUU online 編集部)

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