パスポート
(写真=PIXTA)

海外旅行には欠かせないパスポート。政府が発行する公的書類でもあり、世界的に通用度が高い身分証明書でもある。このパスポートに「強さ」があるのはご存じだろうか。その強さを表す尺度とはビザがなくても訪れることができる国の数だ。その国の「信用度」に置き換えることもできるだろう。その効力を各国で比較したランキングが存在する。

そのランキングとは、カナダの金融コンサルティング会社アートン・キャピタルが今年3月に発表した「パスポート・インデックス」。国連に加盟している193カ国と6地域を対象に、ビザなしか、事前手続きなしで入れる国の数をパスポートごとに集計してランキングにしたものだ。

パスポートランキング上位 アジアの国は少なめ?

1位 147カ国 アメリカ、イギリス
2位 145カ国 フランス、ドイツ、韓国
3位 144カ国 イタリア、スウェーデン
4位 143カ国 デンマーク、オランダ、ルクセンブルク、フィンランド、シンガポール、日本
5位 142カ国 スイス、カナダ
6位 141カ国 ノルウェー、ポルトガル、スペイン、アイルランド、ベルギー、ハンガリー
7位 140カ国 ギリシャ、オーストリア、マレーシア
8位 139カ国 ニュージーランド
9位 138カ国 キプロス、チェコ、オーストラリア
10位 137カ国 スロバキア、ポーランド

最強のパスポートを持つアメリカとイギリス

傾向としては北米・欧州諸国のランクが高く、アジア・アフリカ諸国は低くなっている。外国人の入国は国交や外交が大きく影響し、その国の経済力も関係してくるため、先進国や豊かな国が上位になってくることは想像できるかもしれない。

堂々の1位となったのはイギリスとアメリカ。しかし1位が必ずしも他の国に含まれている国を網羅しているとは限らない。例として日本人にはビザが必要だがアメリカ人がビザなしで入国できる国を見てみると、ガンビアや赤道ギニアなどアフリカ圏が多い。一方、中国やベネズエラへは日本人ならビザは必要ないが、アメリカ人の場合は必要となる。

一方、下位には政情が不安定な国が多くランクインした。ビザなしで渡航できる国が最も少なく、最下位となったのはソロモン諸島、パレスチナ自治区、ミャンマー、南スーダン、サントメ・プリンシペの5カ国。これらの国のパスポートはビザなしだと28カ国しか行くことができない。

日本は堂々の4位、しかしアジアトップはあの国

上位を占める欧州勢にまじって、日本は意外にも4位にランクインした。143もの国にビザなしでアクセスできることを知っている人は少ないかもしれない。世界的にも「日本」ブランドの信頼度は高いと言っていいだろう。

しかしアジア最上位は日本ではない。ドイツ、フランスというヨーロッパの強豪国に並んで韓国がアジアトップの2位に入った。韓国と日本の差はわずか2カ国だが、ビザが必要な国は日本と韓国で意外と異なる。日本ではブラジルやロシアに行くのにビザが必要だが、韓国ではビザは必要がない。一方中国やモンゴルに行くのに日本はビザの必要はないが、韓国のパスポートではビザが必要となっている。

他にアジアで上位に入った国は、日本と同じ4位だったシンガポール、7位(140カ国)のマレーシア、11位(136カ国)の香港、18位(125カ国)のブルネイ。ちなみに中国は47位(74カ国)だった。中国の場合、74カ国の多くがアフリカの僻地や東南アジアの途上国で、先進国や観光立国はほとんど含まれていない。政治的にも経済的にも存在感が増している中国だが、世界的な信用度という意味ではまだまだ低く、海外旅行に行きづらい国のひとつといえるだろう。ただし近年のインバウンド効果で、日本のように中国人の観光ビザを緩和する国も増えている。

欧州のパスポート、なぜ強い

上位はヨーロッパの各国が占めているが、これはシェンゲン協定が大きく関係していると思われる。これはヨーロッパの26の国家間において、国境検査なしで国境を越えることを許可する協定で、域内は移動の自由が認められている。ヨーロッパのパスポートが強いのはそのためでもある。一方、最近では難民が大量にヨーロッパ各国を経由してドイツなどに押し寄せているという弊害も勃発している。協定の自由度が仇になってしまった格好だ。ヨーロッパ内では協定の見直しを求める声もあがっているという。

日本のパスポートは発給数減

強くて信頼度も高いことが裏付けられた日本のパスポートだが、残念なことに発給数は年々減っている。外務省発表の旅券統計(2014年1~12月)によると、一般旅券の発給数は前年比2.6%減の321万冊。2013年は16%減と大幅に減少したが、2014年はさらに下回る発給数となった。また、出国者数も2014年は3.3%減の1690万人となっており、訪日客の勢いが止まらないのとは裏腹に、日本人の内向き傾向が続いている。世界でも有数の旅行がしやすいパスポート、ぜひ使う機会を増やしてみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)