ふるさと納税,確定申告,年末調整
(写真=PIXTA)

2015年の「ふるさと納税」は、2008年の制度が始まって以来、最も盛り上がったのではないだろうか? 税制改正によって手続きが簡素化し、自治体から届くお礼の特産品もますますバラエティー豊富になったことなどが追い風となっているようだ。

今までは遠巻きに見ていたけれど、今年からふるさと納税にチャレンジしたという人も少なくないだろう。中には年の瀬が近づくこの時期、もしかしたら年末調整の時に何か提出しないといけないのでは?と不安に思う人もいるかもしれない。しかし安心してほしい。ふるさと納税は年末調整とは一切関係ない。その仕組みを下記で紹介しよう。


ふるさと納税の仕組み

そもそもふるさと納税は「納税」という文言が使われているが、実際には市町村等に税金を納めるのではなく、あくまで「寄附」を行うものである。「ふるさと(出身地)」でない都道府県や市町村の団体(以下、市町村等)に対しても行うことができる。市町村等にふるさと納税をした人は、その合計額のうち2000円を超える金額が、その年の所得税と、翌年度の個人住民税から控除される。

ふるさと納税を利用して所得税や住民税の控除を受けるためには、原則として寄附をした本人が確定申告することが必要となる。納税(寄附)から税額控除を受けるまでの流れは以下の通りである。

①「ふるさと納税」を申し込む
②申し込み完了から約2カ月後、寄付先の自治体から寄付者の住所宛てに「寄附証明書」が届く
③税務署へ行って確定申告をする。このときに寄附証明書を添付する必要がある(パソコンで必要事項を入力し、印刷して郵送で確定申告することも可)
④寄附を行った年の翌年3~4月ごろ、所得税控除額が銀行口座など確定申告時に指定した口座に振り込まれる
⑤寄附を行った翌年5月ごろ、年間の住民税通知が送付される際に、控除額が差し引かれる

以上の流れを踏まえると、ふるさと納税と年末調整はまったく無関係であることが分かる。しかも、今年1月からは確定申告をしなくても控除を受けられる「ワンストップ特例制度」が始まったので、確定申告すら関係ない人もいる。

確定申告しなくてもいい「ワンストップ特例制度」とは

「ワンストップ特例制度」は、ふるさと納税を利用した人のうち、もともと確定申告する必要のない給与所得者(サラリーマンや役員で年末調整のみ受けている人など)が利用できる新しい制度である。これまでは、ふるさと納税のためだけにわざわざ確定申告をしなければいけない人もいたのだが、2015年4月以降の寄附からそのケースはなくなった。

この特例制度が適用されるためには3つの条件を満たす必要がある。

・ふるさと納税の寄附先が5団体以内
・2015年1月1日~3月31日までにふるさと納税をしていないこと
(この期間にふるさと納税をした場合、2015年度中の寄付については、控除を受けるために確定申告が必要)
・もともと確定申告をする必要のない人であること

「ワンストップ特例制度」の適用を受けるためには、ふるさと納税をした先の市町村等の団体へ「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」という特例申請書を提出する必要がある。寄附をする際、同時に申請書の送付を申し込むか、あるいは寄附をした人が自分でワンストップ特例制度用紙をプリントアウトして寄附した市町村等へ提出することが必要となる。特例申請書がふるさと納税先の団体へ提出されると、そこから、ふるさと納税をした人の住む市町村へ住民税を控除するための情報が伝達され、翌年の住民税が自動的に減額されるという仕組みになっている。

「ワンストップ特例制度」の適用を受ける場合は、所得税の還付はなく、住民税からのみの控除となる。この場合、所得税の還付分も住民税から控除されることになる。

最後に補足だが、寄附先の市町村等へ提出する特例申請書は、2016年1月10日までに提出しなければ「ワンストップ特例制度」による控除の対象とはならない。年末にふるさと納税を利用する場合は特に注意が必要なので、寄付先の市町村等へ確認するようにしたい。また、年の途中で引っ越した場合も、2016年1月10日までに、寄付先の市町村等へ変更届出書の提出が必要となるので注意してほしい。

杼木 美絵 ファイナンシャルプランナー(CFP)・行政書士
子どもが1歳の時、ファイナンシャルプランナーを目指して、勉強を始め、CFP(FP協会認定)を取得。その後、行政書士資格も取得し、『お金のことから法律まで』身近に相談できるFPとして滋賀で開業。 FPCafe 登録FP。