郵政,IPO
(写真=Thinkstock/Getty Images)

11月4日に東京証券取引所第1部に上場した日本郵政 <6178> とその傘下のゆうちょ銀行 <7182> とかんぽ生命保険 <7181> であるが、初日は3社とも公開価格を大幅に上回り、その後も、東証1部ということで、TOPIXに連動する投信を中心とした、実需の買いとその期待感から順調に公開価格を上回る水準で推移している。だが、今後もこの流れは継続するのだろうか。


日銀の量的金融緩和で運用難のゆうちょ銀行

総資産が208兆円と国内最大規模の資産を誇るゆうちょ銀行であるが、2016年3月期決算の予想は、3200億円と前期から13%も減少する見込みで、厳しいのものとなっている。

投資信託の販売額は11%増を見込んでいるものの、日銀による量的金融緩和で金利が低下し、運用難に陥っていることが主な原因の一つと考えられる。

ゆうちょ銀行はリテール分野では圧倒的な知名度を誇る。しかし、住宅ローン事業などを展開できておらず、ホールセール分野でも法人融資を行えていないことで、顧客の預金(貯金)を市場での運用に頼らざるを得ないのが現状だ。この歴史的な低金利で、国債などでの運用で利ザヤを稼ぐことが難しい状況は今後も続くと考えられるだろう。

また、株価指標の観点から考えると、PER約21倍程度となっており、業種平均よりも高くなっている。三菱UFJ <8306> のPERが約11倍程度であることを考えるとやや割高であり、PBRについても三菱UFJの0.7倍台よりは低いものの、業種平均の0.6倍を上回る0.66倍程度となっている。

以上を考慮すれば、やや下落トレンドを想定すべきだろう。トレンドが変化する可能性としては融資などの新規事業の目途がたつタイミングなどが考えられる。

人口減、高齢化の影響を受けるかんぽ生命保険

上場初日はストップ高になるなど、郵政3社では最も人気となったかんぽ生命であるが、上場2日目に高値を付けて以降、下落トレンドとなっている。人気化した理由は、売り出し株数が少なかったことで、インデックスファンドなどの実需の買い期待が膨らんだためと考えられる。

かんぽ生命の総資産は、84兆円と最大手の日本生命を上回る水準で、ソルベンシー・マージン比率(保険会社の経営の健全性を測る指標で、数値が高ければ高いほど保険金の支払い余力があり、健全な経営状態であることを意味する)も1,641%と良好である。

しかし、日本の人口減と高齢化の進行を考えれば、中長期的な視点での成長は考えにくい状況となっている。事実、総資産も年々減少傾向にあるのだ。運用面でも、ゆうちょ銀行同様、金利動向に左右される展開が想定され、量的金融緩和が続く環境下で利ザヤを稼ぐことは難しい。

株価指標の観点では、PERは約24倍、PBRは1.0倍だ。生命保険業界は相互会社が多く、上場企業は少ないものの、第一生命 <8750> のPER約18倍、PBR0.7倍と比較すれば、割高と言わざるを得ない水準である。よって、これらを考慮すれば、今後も下落トレンドを想定すべきではないだろうか。

反転のタイミングとしては、他の生命保険会社同様、成長性の高い海外での事業展開などがきっかけとなるはずだ。

郵便事業の黒字化が困難な日本郵政

郵政3社の中では、最も人気がなかったのが日本郵政だ。しかしながら、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵便を傘下に持つ巨大企業である。上場2日目に安値を付けたものの、公開価格を上回る水準で推移し、上昇トレンドとなっている。

しかし、全国に郵便局と従業員を配置する郵便事業の維持負担は重い。郵便事業の赤字を、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が穴埋めする構図となっており、今後もIT技術の発展や人口の減少から、郵便物の総取扱数が増えることは考えにくい。それだけに郵便事業の黒字化は困難だろう。これらが考慮されたことと、売り出し株数の多さから人気化しなかったと考えられる。

株価指標の観点で見ると、金融や陸運を傘下に持っているため比較対象として適したものはないものの、PERは約23倍、PBRは0.58倍で割高とは言えない水準となっている。しかし、稼ぎ頭のゆうちょ銀行とかんぽ生命についても成長性が高いとはいえない状況を考えれば、下落トレンドを想定すべきだろう。上昇のポイントは、物流事業などの拡大による郵便事業の黒字化と考えられる。

成長戦略の実現に向けた企業努力を早期に示せるか?

以上のように、郵政3社とも中長期では、下落トレンドとなりやすいと考えられるが、短期的にはTOPIX連動のファンドなどの買いからある程度安定的な推移が予想される。

今回のIPOでの株主の多くは個人投資家であるが、公募価格を上回っているうちに売却し、よりPBRやPERの低い同業種の銘柄に乗り換えるという戦略も理にかなっているといえる。ただ、願わくば個人投資家が長期保有したいと思えるような、成長戦略の実現に向けた企業努力を早期に示すことも期待したいところである。 (ZUU online 編集部)

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