◆2016年はどんな年?

(1)世界経済の耐久力が問われる

それでは、来年はどのような年になるのだろうか?まず、世界経済という観点では、世界経済はその耐久力を問われることになる。

米国の利上げがずれ込んだことで、実際に利上げ後に副作用が出るかという問題も後ずれし、来年のテーマになった。米利上げで懸念される副作用とは、米国経済自体への悪影響、新興国からの資金流出、資源価格下落による資源国へのダメージなど複数にわたる。この件に関しては、米国の利上げペースがどの程度かという点も影響を与える。

また、来年も中国経済の減速基調が続くことがほぼ確実視されるため、その悪影響も予想される。とりわけ、アジア新興国や資源国は、米利上げと中国経済減速の悪影響をダブルで受けやすいため、警戒が必要になる。この件に絡んで、3月に開かれる全人代で決定される第13次五ヵ年計画の内容が注目される。

さらに地政学リスクも高い状況が続くだろう。米国が財政上の制約などから積極的な対外関与を手控えたことで、他の国家や勢力がその力の空白を埋めるべく、パワーバランスを再構築する動きに出ており、今後も衝突の動きが出やすい状況にある。現在進行形のシリアなどの紛争についても、かつてのような米国の強いリーダーシップが期待できないため、収束までに時間を要しそうだ。

リーマン・ショックの後には、世界の主要国が協調して金融政策・財政政策をフル活用し、危機をなんとか乗り切った経緯がある。ただし、その結果として政府債務残高が増加し、多くの国が緊縮的な財政運営を余儀なくされているため、現在はリーマン・ショック後のような大規模・協調的な財政出動が困難になっている。

金融市場4

このように政策対応力が落ちている中で、来年は米利上げ・中国経済減速・地政学リスクなど下振れリスクに事欠かない状況になるため、世界経済の耐久力が問われることになるだろう。その他のテーマについて、海外のスケジュールを見てみると(表紙図表参照)、来年は主要国の重大な選挙はあまり見当たらない。

そうした中で存在が際立つのが経済大国米国の大統領選だ。2期目にあたるオバマ現大統領の再選がない中で、新たな大統領が選ばれるビックイベントなだけに、有力候補の政策に注目が集まりそうだ。大統領選を終えた年末には、不透明感が払拭されることが世界的な株価の追い風になる可能性がある。