(2)国内の注目点は政治・緩和・賃上げ、企業は真の稼ぐ力が問われる

国内のスケジュールでは、やはり政治イベントが注目される。具体的にはまず春に発表予定の「ニッポン一億総活躍プラン」、そして7月に予定される参議院選挙だ。

「ニッポン一億総活躍プラン」は秋に発表された新三本の矢の具体的なロードマップにあたる。新三本の矢については、方向性自体は評価できるものの、唐突感があり、未だ中身は乏しい。市場でもあまり評判が良くないとみられるだけに、プランの発表で評価を一新し、またかつての三本の矢のように市場の期待を高められるかが焦点となる。

参議院選挙については、衆議院選挙とのW選挙になるとの憶測も出てきているが、いずれにせよ政権の基盤安定に繋がるかがポイントになるだろう。

また、金融政策では、日銀の追加緩和の有無が注目点となる。景気停滞下でも動かない日銀のスタンスから、市場では「もはや日銀の追加緩和はない」との見方も増えているが、筆者は今のところ来年1月末の追加緩和を予想している(*1)。

日銀も政策余地が限られてきているとみられ、これまでほど大胆な緩和とはいかないだろうが、早期の追加緩和があれば、サプライズ感も手伝って円安・日本株高材料になるだろう。

金融市場5

日本経済という観点では、来年2月から本格化する春闘での賃上げが大きな意味合いを持つ。今年の春闘では、例年を超える賃上げが実現したが、一人当たり賃金はようやく前年比で0.5%前後のプラスになった程度に留まる。日本経済の力強い成長のためには賃上げの動きがさらに強まる必要がある。

来年は原油安の一巡などから、物価上昇率が現在よりも上昇すると見込まれるため、賃上げが不十分の場合は、再び実質賃金がマイナス化する恐れがある。来春闘は来年の日本経済と株価を大きく左右する材料になるだろう。

ちなみに、10月に大筋合意したTPPについては、発効までにまだ時間がかかりそうだ。規定によれば、全12カ国で批准されてから60日後に発効(2年以内に批准できない場合は、域内GDPの85%以上を占める6カ国以上の批准で発効)とされており、来年中に発効に至る可能性は低そうだ。

日本企業という観点では、来年は今年よりも企業の自力が問われることになる。既述のとおり、今年は平均でみれば前年比で大幅な円安であったが、来年は円安度合いが縮小する可能性が高い。

弊社見通しでは、日米金融政策の違いから、年末にかけて緩やかな円安進行を見込んでいるが(最終ページご参照)、それでもドル円レートの前年比は5%程度に留まる。増益率に占める円安による嵩上げ分が低減することに伴って、企業は真の稼ぐ力を問われることになる。

以上、来年の注目テーマを見てきたが、基本的なシナリオとしては、日米経済の回復、緩やかな円安に伴って、来年の市場の方向性は円安・株高と予想している。

ただし、世界的に政策対応力が落ちている中で、米利上げ・中国経済減速・地政学リスクなど下振れリスクには事欠かない状況になるため、投資家としては、従来以上に下振れリスクへの目配りが欠かせない一年になりそうだ。なお、国内政治、賃上げの動向には不透明感があり、日本株にとっては、上振れリスクにも下振れリスクにも成り得る。