配偶者控除
(画像=PIXTA)

2015年の残すところあとわずか。年末といえば、会社勤めの人なら総務部から「年末調整の書類を書いて出してください」と言われる時期だろう。年末調整で損をしないために、今回は「所得控除」のうち代表的な「配偶者控除」と「配偶者特別控除」について詳しく説明する。

配偶者控除と配偶者特別控除との違い

年末調整には「普段の給与で天引きされている税金が少し返ってくるための手続き」というイメージを持っている人も多いだろう。「税金を少し返してもらう」ために必要なのが控除の申請である。

控除にはさまざまな種類があるが、配偶者がいる人、つまり結婚している人が受けられるのが「配偶者控除」「配偶者特別控除」である。

配偶者控除は、配偶者の年間合計所得金額が38万円以下である場合に適用される控除で、控除額は38万円である。一方、配偶者特別控除は、配偶者の年間合計所得金額が38万1円から76万円未満の場合に対象となる。控除額は、配偶者の年間合計所得金額に応じて、3万円~38万円の間に定められている。

今年結婚した人であれば、配偶者が配偶者控除もしくは配偶者特別控除の対象になる場合、たとえ年の途中に結婚したとしても定められている控除額の満額を受けることができる。極端な話、12月31日に結婚・入籍した場合でも、その年に定められている控除額の満額を所得から控除できる。

配偶者の給与別、配偶者控除額

では、配偶者の所得がいくらなら家計にとって「お得」なのだろう。

配偶者の収入がすべて「給与」である場合、配偶者控除の38万円に「給与所得控除」の65万円を加えた103万円が「配偶者控除」を受けられる上限となる。配偶者の給与収入が103万円1円以上141万円未満なら「配偶者特別控除」を受けられる。

配偶者の給与収入額(配偶者控除・配偶者特別控除の範囲)別に、所得控除額をまとめると、以下のようになる。

※本人の所得が1000万円以下の場合の配偶者控除額
配偶者の給与収入103万円以下…38万円
103万1円~104万9999円…38万円
105万円~109万9999円…36万円
110万円~114万9999円…31万円
115万円~119万9999円…26万円
120万円~124万9999円…21万円
125万円~129万9999円…16万円
130万円~134万9999円…11万円
135万円~139万9999円…6万円
140万円~140万9999円…3万円
141万円~…0円

本人の所得が1000万円以上の場合は、配偶者特別控除は一切受けることができないので、注意が必要である。

また、本人の所得額にかかわらず、配偶者の給与収入が130万円以上になると配偶者自身が社会保険料を支払う必要性が出てくる。(2016年10月からは一部の大企業では、年収106万円以上、週20時間以上の勤務などを満たすと社会保険料を支払うことが必要となる)

「130万円の壁」と言われる理由

配偶者の収入が増えるほど、所得控除の金額は少なくなっていくことが分かる。それでも、配偶者の収入が配偶者特別控除の範囲内なら、配偶者の収入が増えるほど夫婦合算の収入は大きくなる。

一方、配偶者の収入が130万円以上となると、配偶者に社会保険料が発生するため、夫婦合算の手取り収入は大幅に減少することとなる。したがって、配偶者特別控除のメリットを最大限享受できるのは、配偶者の収入が129万9999円までとなる。これがいわゆる「130万円の壁」である。配偶者の年内の収入が130万円付近になりそうな方は、配偶者の職場に相談し、勤務時間を少し減らす等、収入を調整したほうがいいだろう。

山野周太郎     公認会計士
1977年生まれ。神戸商科大学卒業後、大手監査法人に入社。上場会社の監査、上場準備会社へのアドバイザリー業務に従事。その後大手銀行のコンサル部門での勤務を経て、現在は大阪の会計事務所で医療法人、一般法人の税務顧問、資金繰りコンサル、法人成りコンサルを担当。