日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業は+12(コンセンサス+11)と、7〜9月期から変化はなかった。中国経済の低迷とその影響を受けた新興国向けを中心に輸出が弱く、生産活動も鈍ってしまい、7〜9月期には+15から+13へ若干悪化していた。一方、米国経済は堅調な動きを見せている。そしてこれまでのリストラ・構造改革により、売上高・経常利益率が過去最高水準になっている。2015年度の下期の想定為替レートは1ドル118円であり、この水準を上回る円安、そして、原油価格などの下落による著しい交易条件の改善も支えとなっている。


景況感の改善傾向は続く

ビジネスにとってより重要な名目GDP成長率が1〜3月期の年率8.4%の拡大の後、4〜6月期(同+0.6%)と7〜9月期(同+1.6%)もプラスを維持した。企業収益の拡大は堅調であり、業況感の底割れはなかった。1〜3月期への先行きDIは+7と悪化が予想されている。しかし、先進国が堅調な回復を続け、新興国経済が減速局面を脱していくことにより、輸出の伸び率は持ち直していくとみられる。

持続的な経済成長、そして物価・コストも持続的に上昇することを企業が予測し始めれば、在庫管理システムの効率化を考慮しても、企業の在庫投資に対する考え方は前向きになり、少々の在庫の増加は先行きのリスクではない。政府・日銀の政策対応によるデフレ完全脱却へのコミットメントへの信任はまだ維持されている。グローバルマーケットのリスク回避の動きにより、想定為替レートを下回る円高にならない限り、悪化が予想されていたが横ばいであった10〜12月期と同様に、景況感の底割れはないだろう。

10〜12月期の大企業非製造業業況判断DIは+25(コンセンサス+23)と、7〜9月期から横ばいとなった。1〜3月期は+19であったことを考えれば、改善傾向が続いていると言えるだろう。昨年4月の消費税率引き上げと2017年4月の引き上げを控えていることが消費者心理を下押しし、消費の回復は停滞していた。しかし、失業率が自然失業率とみられる3.5%を明確に下回り、労働需給はかなりタイトになっている。パートタイム労働者の増加により平均賃金の上昇は鈍く見えるが、総賃金は前年比+2%に向けて拡大が加速している。原油価格の下落などにより消費者物価の上昇がないため、消費者は実質賃金の上昇を感じやすくなり始めている。これまでの株式や不動産などの資産価格上昇の好影響も徐々に染み出しつつある。

一方、8月半ばからグローバルに株式・為替市場が不安定になったことが景況感の下押しになっている。さらに株価が落ち込めば、企業・消費者心理を下押すリスクが大きい。しかし、安倍首相は、17年4月の消費税率引き上げまでに日本経済を確実にリフレイトし、景気回復を国民に実感させる決意を表明している。年初には3兆円強の政府による経済対策が実施される。ここ数年で、人民元が円に対して50%以上切り上がったインパクトは大きく、中国からの来日客の増加は続くと考えられる。1〜3月期への先行きDIは+18へ悪化予想となっているが、年初からは景況感の改善のきっかけを探す展開となり、改善傾向は続くだろう。