米利上げ,マーケット・カルテ
(写真=PIXTA)

今月16日のFOMCで米国がとうとう利上げを開始した。これに伴う米金利の小幅な上昇と市場のリスク選好を受けて、ドル円は122円台半ばに上昇し、初期反応としては円安ドル高となっている。

米国の段階的な利上げを原動力として、今後も中期的な円安ドル高基調は崩れないと見ているが、しばらくはドルの上昇余地は限定的となり、ボックス圏での推移になりそうだ。リスク選好の円売りに持続力は期待できないうえ、FRBは緩やかな利上げを強調しており、米金利の上昇も限られるためだ。

利上げの副作用(新興国からの資金流出・原油価格下落)に対する市場の警戒が高まりやすくなることもリスクオンの円売りを阻害する。その後、米国の「2回目の利上げ」が見えてくる2月頃になれば、125円台を目指す動きが出てくるだろう。

3ヵ月後の水準は、現状比で円安ドル高と予想している。なお、日銀が早期の追加緩和に踏み切り、その内容が市場で合格と受け止められれば、円安の動きがさらに加速することになる。

米利上げ後のユーロ円相場は、ユーロも円も対ドルで売られたため、小動きに留まっている。ユーロ圏と日本では、景気や金融政策が似ているため、ユーロ円では動きが出にくい。今後も基本的にこの構図は継続すると見込まれるため、3ヵ月後のユーロ円も現状比でほぼ横ばいと予想している。

長期金利は0.3%付近での推移となっている。米利上げの影響は現状確認できない。米金利上昇は金利上昇要因となるが、今後も緩やかな上昇に留まること、日銀の国債買入れに伴う債券需給逼迫が続くこと、ドル調達コスト上昇に伴う海外マネーの流入が続くことから、今後3ヵ月は長期金利の低迷が続くと予想。(執筆時点:2015/12/17)

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上野剛志
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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