日本企業の問題としてかねてから指摘されてきた「低生産性」。アメリカなど海外と比べても低く抑制されてしまっている実態がたびたび指摘されており、生産効率の改善が日系企業や日本経済全体にとって成長を後押しするとみられている。
時にみられる超過勤務や、過度なプレッシャーにより、生産性の向上が抑制されていた可能性もある。「ブラック企業」などが取り沙汰される中で、職場環境そのものが企業の生産性を低下させる点も無視できない。
そうした厳しい職場環境の悪影響の一つが従業員のメンタルヘルスの不調となっている。こうした問題に対処することで、生産性を上げ、社会的信頼を得て、競争に打ち勝っていけるのではないだろうか。
日本企業はなぜ、米企業よりも生産性が低いのか?
日本企業の生産性は米企業よりもかなり低いといわれている。日本の低生産性を直接指摘する調査もすでにあり、製造業は約50%、卸売業では約45%、小売業では約40%、通信業も約40%も低いことを、日本産業研究所の森川正之副所長が明らかにしている。
厳密な比較は難しいものの、米企業に比べて半分程度の効率だと示しており、同じ生産量だとすれば、日本では2倍の労力がかかるのだと言えそうだ。
他方で、日本企業の課題として「低生産性」は長らく指摘され続けてきており、なにも今に始まった傾向ではない。業種や企業によってその原因はそれぞれ異なっているが、ストレスの多い職場環境は生産性の低い会社に多くみられる。ともすれば、それに起因して従業員のメンタルヘルスが悪化してしまう可能性も比較的、高くなりがちだろう。
実際に、仕事や職業生活に強い不安や悩みを抱える人々は多い。厚生労働省の2012年の調査によれば、仕事に関して強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じている従業員の割合は60.9%にも上る。内容としては「職場の人間関係の問題(41.3%)」が最も多く、次いで「仕事の質の問題(33.1%)」、「仕事の量の問題(30.3%)」となっている。悩みやストレスを抱える従業員がこれほど、増えてしまっては仕事の効率も落ちかねない。
さらに、メンタルヘルスの不調により1カ月以上連続で休業しなければならなかったり、退職してしまったりする従業員のいる事業所の割合は8.1%にのぼる。2014年度の労災請求件数は1456件に及び、うち自殺は213人に及んでいることを鑑みれば、メンタルヘルス管理上の問題が、企業の生産性に悪影響を及ぼしている可能性も高い。
つまり、メンタルヘルスの改善が生産性を低く抑えている原因を取り除くことにもつながる素地があるのだ。
カギは「一次予防」と「組織特性の改善」
米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)による「健康職場モデル」によると、仕事量やペースといった作業特性ばかりでなく、「マネジメントの態様」「組織文化/風土」「組織の価値観」といった組織特性もにも、職場におけるストレスは左右されるという。
さまざまな職場にあるが、業務内容、体調などと併せて、上司と部下の関係や組織の理念にも、従業員のメンタルヘルスが左右されることになる。
それを前提とすれば、メンタルヘルスの維持において特に大事なのは、健康増進や発症予防を狙った「一次予防」であり、次に早期発見、早期治療を狙った「二次予防」をすべきとなる。そして、職場復帰と、再発予防という「三次予防」を実施すべきだということになる。
目先の対応に追われるのではなく、中・長期的な視点を持って、まず「一次予防」に力を注ぐことこそが、結果的には生産性の向上につながるだろう。例えば、負担が集中している従業員の業務量を削減したり、納期を延長したり、医師を交えて部下との面談を行わなければならない。
このように組織の在り方を作っていくことで、従業員のメンタルヘルスを守りながら、生産性の向上にもつながる効用を得られる可能性も高いのだ。(ZUU online 編集部)
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