(写真=PIXTA)
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米連邦準備制度理事会(FRB)は12月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を25bps上げ50bpsに利上げした。リーマン・ショック後の2008年に非常時の政策金利として導入以来、7年ぶりにゼロ金利のから脱出だ。FRBは、非常時の低金利を通常時の政策金利に戻すプロセスに入った。コンセンサスでは2016年末までに、25bpsずつ2−3回の利上げが見込まれている。

米国と日本・欧米の金利差が2016年はさらに拡大

米国が利上げにはいる一方で、欧州中央銀行(ECB)と日銀はまだ金融緩和を継続していく見通し。欧州はとくに原油安が直撃するためデフレ懸念が根強く、12月3日のECB理事会で、ファシリティ金利を下げるなどの追加金融緩和に踏み切った。日銀も12月18日に現行金融緩和政策への「補完措置」という位置づけの追加緩和を発表している。米国の利上げトレンドと日・欧の低金利継続から、日米、欧米の短期金利差は拡大する見込み。ヘッジファンドなどは、円キャリー、ユーロキャリーのポジションを積み重ねている模様だ。

2016年の先進国通貨…勝ち組はUSドル・ポンド・カナダドル 負け組はユーロ

米国以外では、景気の底堅い英国、カナダなどが利上げをする可能性が強い。したがって、主要通貨では、USドル、英国ポンド、カナダドルなどが勝ち組となるとの見方が強いようだ。負け組の筆頭はユーロで間違いなさそう。ゴールドマン・サックスは米利上げ後、ユーロドルはパリティ(ユーロドル=1)を目指すとの予想を出していた。

2016年「円は負け組」だがトレンド変換の可能性も

円の判断は微妙になる。コンセンサスではまだ円安ではあるが、トレンドが転換するとみているストラテジストも増えてきた。

2015年6月に黒田日銀総裁は、「実質実効為替レートでは充分円安で125円より円安を望まない」とのコメントを出し、以降125円が黒田ラインとしてドルの上値抵抗線として意識されるようになっており簡単に125円を突破するとは思いづらい。

また、足下の日本の経済市場も好調なものが増えてきており、2015年7−9月のGDP改定値は、速報の年率−0.8%減から+1.0%増に上方修正され、第3四半期はプラス成長となった。2015年10月の鉱工業生産も前月比+1.4%増と堅調だった。

12月18日の現行金融緩和政策への「補完措置」についても、むしろ日銀の選択肢はもう限定的だとの見方が広まり、円が買われる結果となった。追加緩和なのか質的量的緩和(QQE)のテーパリングかの分岐点に来ているのは間違いなさそうだ。

メリルリンチやJPモルガンなどは円高へのトレンド変換を見込んでいる。メリルリンチは、通年で安倍政権下では初めて対ドルでの円高を見込んでいる。2016年3月の128円までドルは上昇トレンドを維持するが、その後調整に入り、年末には1ドル120 円に回帰するとの予想のようだ。さらなる円高もリスク要因としてあげている。JPモルガンも、円高・ドル安トレンドに転換し、アベノミクスから始まった円安が円高にトレンドが変わる年としている。年末のドル・円レートは1ドルを110円、ユーロ・円は124円を予想している。

中国元については、11月30日にIMFがSDRへの採用を決めた。2016年10月から中国元は準備通貨となり、国際通貨の仲間入りとなる。SDRでのウェイトは、ドル、ユーロについで3番目のウェイトで、円の8.33%やポンドの8.09%を上回る10.92%となる。世界の準備通貨としての人民元の地位が確立すれば、中国の資本勘定の開放は一段と加速、人民元の国際通貨としての立場はさらに向上していく可能性が強い。中国人民元が安くなるのがコンセンサス。

2016年の新興国通貨…負け組候補は、ブラジル・トルコ・南ア

米利上げで、懸念は新興国通貨だ。直近では、2014年5月23日に当時のFRB議長バーナンキ氏が量的金融緩和(QE3)の縮小を示唆しただけで新興国通貨は大幅に下落、日経平均株価は1日で1100円以上急落した。

2015年は米利上げ観測で年初からドル高、新興国通貨安が進んだ。8月には、中国の景気急減速懸念も加わって世界の株式市場が大きく下げた。10月初旬時点でマレーシア、南アフリカ、トルコの通貨は対ドルで年初から2割以上低下、ブラジル・レアルは3割以上も下落した。その後市場が落ち着きを取り戻し、これら新興国通貨も大きく値を戻したが、直近では中国人民元が4年4ヶ月ぶりの安値を記録、南ア・ランドも今月だけで8%も下落している。

1998年のアジア危機以降、新興国は外貨準備高を大きく積み上げており、以前のように通貨危機のリスクは高くはなくなっている。2000年末から昨年末までの14年間で、準備高は中国が23倍、ロシア14倍、インド8倍、南ア6倍など急拡大している。したがって、一国が経済破綻する可能性は低くなっているが、新興国の企業部門の負債が急膨張しているのが新たな懸念だ。

国際通貨基金(IMF)が9月末に発表した世界金融安定報告によると、主要新興国の金融機関以外の企業の負債は2014年に約18兆ドル(約2160兆円)と、10年前の約4兆ドルから4.5倍に急増し、これらの国のGDP総計に対する比率も26ポイント上昇して75%近くになっている。

国別にみると、リーマン・ショック前の2007年以降の借金増加分を対GDP比でみると最も増えたのは中国で25%程度、トルコとチリは20%以上、ブラジルとインド、タイ、メキシコ、韓国、インドネシアなどが10%前後となっている。

これらのなかで経済のファンダメンタルズが弱いブラジルやトルコ、南アが負け組候補筆頭だ。ブラジルは今年第2四半期以降しばらくマイナス成長が続きそうだ。メキシコや韓国、マレーシアは比較的安全か。第3四半期の成長率が2.6~4.7%と堅調で、米国と相前後して利上げする可能性もあり、今のところ政治・地政学的なリスクは大きくなさそうだ。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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