相場の世界では「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、『申酉騒ぐ』、戌は笑い、亥固まる、子は繁栄、丑はつまずき、寅千里を走り、卯は跳ねる」という格言がある。
騒ぐというのは、相場の変動幅が大きく、リスクが高い、つまりボラティリティが高いという意味と考えられるが、ヒストリカルデータとして、実際はどうなのか検証するとともに、2016年の相場を考えてみたい。
2004年の日本株は上昇もやはり値動きは荒い
前回の申年である、2004年の日経平均株価は、前年末の1万676円64銭から1万1488円76銭まで上昇し、年間の騰落率は7.6%となっていた。
終値ベースでの最安値は1万0365円40銭で、最高値は1万2163円89銭と年間の騰落率だけでみれば、大きな変動があったとは言えない。しかし、世界的な株高から上昇トレンドでスタートしたところから、利益確定の売りで下落に転じ、2月に当時のグリーンスパンFRB(連邦制度理事会)議長が低金利の維持を示唆すると反転し、その年の高値を付けるなど年初から「騒がしい」展開だった。
その後は、外国人投資家が売り越しに転じるて2番底を付けるも、5月に発表された1〜3月期GDPが市場予想を大きく上回ると、再び上昇に転じた。さらに6月にFRBが利上げに転換すると、そこからはやや下落トレンドが続くも、円高が一服し、外国株と比して出遅れ感があったことで多少買われて終わるという「騒がしい」と呼ぶにふさわしい値動きの荒い展開だった。
1992年はバブル崩壊で暴落
前々回の1992年の日経平均株価は、前年末の2万2983円77銭から1万6924円95銭まで下落し、最高値は2万3901円89銭で、最安値は1万4194円40銭となっており、年間の騰落率は-26.4%と大暴落となっていた。
原因は、バブル崩壊が顕著となり、金融システム面の懸念から、下落が加速したことにある。8月に安値を付けたあとは、当時の大蔵省による「金融業の当面の運営方針」の発表や政府の「総合経済対策」の決定を受けて株価は反転し、その後は横ばいで推移したものの、荒い値動きの年だったといえるだろう。
2016年の日本株はどうなる?
ちなみに、それ以前の申年の日経平均株価であるが1956年、1968年のいずれも大幅に上昇しており、1980年も7.5%の上昇と概ね格言通りの「騒がしい」相場といって良いだろう。
過去の状況から考えると、2004年の後半の値動きが、メインシナリオとなるはずだ。本年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で米国が、実に7年ぶりの利上げを行ったが、それは2004年の6月の出来事を想起させるものである。
過去の利上げ局面の動きは、1994年、1999年、2004年いずれも、米国株は利上げから数カ月は下落トレンドとなり、その後上昇という共通のパターンが認められる。ドル円においては、過去5回のほとんどは、利上げ前は米ドル高で動いているものの、利上げ後は半年から9カ月程度米ドル安で推移している。
これらを考慮すれば、年初から利上げの実体経済への影響懸念による外国株の下落や円高進行により、外需関連銘柄が中心の日経平均株価などの日本株においても下落トレンドを想定すべきである。ただ、年後半からは、米国経済が順調に推移していることが確認されることで、徐々に円安傾向となり、日本株においても、上昇して年末を迎えるという展開がイメージできる。
下値波乱のシナリオも否定できない
なお、過去に利上げ後ドル高となったケースとして、1997年のアジア通貨危機がある。当時のアジア通貨危機は1997年にタイを震源地として、韓国などのアジア諸国にまで波及した。投機筋のタイバーツ売りに対抗してドル売りバーツ買いの介入を行っていたタイが固定相場制を放棄したことで、アジア諸国で急激に資本流出し、通貨が暴落したのだ。
その結果、リスク回避のドル高の流れとなり、ドル円相場においても、円安が進行した。ただ、日本株においては、マーケット全体がリスク回避の流れとなったことで、年初の約2万円程度から、1万5000円程度まで下落するという結果だった。
アジア通貨危機を記憶している世代には、現在の中国の景気減速と重ねて考える向きもいるのではないだろうか。当時の通貨危機を教訓に、多くのアジア諸国が外貨準備を厚くし、中国も管理フロート制を導入するなど、当時のような危機は考えにくい。しかし、一方で米国の利上げにより、過剰流動性相場で新興国に流れていたマネーが米国に流れ込むことも想定されるだけに予断を許せない。中国の経済指標が悪化し、不動産バブルが崩壊の兆しを見せていることを考えれば、日本のバブル崩壊とも重なるはずだ。だとすれば、リスクシナリオは、1992年のバブル崩壊の相場であり、暴落を覚悟しなければならない。
どちらに転ぶかは分からないものの、やはり2016年は「騒ぐ年」になりそうだ。(ZUU online 編集部)