(写真=Thinkstock/Getty Images)
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11月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.1%(コンセンサス0.0%程度)と4ヶ月ぶりに上昇に転じた。確かに、これまでの円安によるコストプッシュの価格転嫁の進展が、物価の押し上げに働いている。

しかし、昨年後半から年初までの原油価格の急落の影響が前年同月比で強く残っており、2%の物価上昇の日銀のコミットメントに反し、コアCPI前年同月比は今年の半ばからゼロ%近傍の動きとなっている。7月以降、原油価格は再び下落してしまっているため、昨年からの下落の影響が剥げ落ちつつあっても、コアCPI前年同月比のリバウンドはまだ弱い。

一方、11月のコアコア消費者物価指数(除く食料及びエネルギー)は前年同月比+0.9%(10月同+0.7%)と、しっかりとした上昇をみせてきている。しかし、昨年4月の消費税率引き上げによる消費者心理の萎縮がまだ残ってい中で、食料品を中心とした値上げが続き、家計調査でもみられるように、消費者は防衛的になってしまっているようだ。2017年4月に再度の消費税率の引き上げがあることも、消費者心理を抑制している可能性もある。

今後の更なる値上げが需要を大きく減少させるリスクを企業は感じ始め、値上げに慎重になっていくだろう。そして、新興国経済の弱さなどにより、被服と食料を中心とした値上げが鈍くなる可能性もある。需要拡大がついてこなければ、コストプッシュのみによる物価上昇は継続しないだろう。

かなりタイトな労働市場

11月の失業率は3.3%(コンセンサス3.2%)と、10月の3.1%からリバウンドした。失業率が自然失業率とみられる3.5%を明確に下回り、労働需給はかなりタイトになっている。

9月の3.4%から、10月に大幅に低下したのは、9月のシルバーウィーク後に労働市場から退出してしまった労働者が大きく増加したのが理由であり、失業率は持続的に低下のトレンドにあるとはいえ、3.1%の結果はできすぎであった。11月にはまだ労働市場から退出する労働者が継続し、就業者はシルバーウィークの反動が引き続きみられることと、暖冬の影響もあり減少が続き、失業率は3.3%まで戻った。

11月の有効求人倍率は1.25倍(10月1.24倍)と再び上昇を始め、10-12月期の日銀短観全規模全産業の雇用判断DIは-19(マイナス=不足)と、1992年4-6月期以来の雇用不足の状態となり、企業の採用意欲は強い。

内需の動向を最も敏感に反映し失業率に先行するため重要視している日銀短観中小企業金融機関貸出態度DIも+17へ再び改善し、前回のサイクルのピークを明確に上に突き抜け、今回のサイクルが前回と比較しデフレ完全脱却へより強い動きとなっていることが確認できている。

失業率は自然失業率を持続的に下回る水準に既に低下し、労働市場はかなりタイトであり、パートタイム労働者の増加により平均賃金の上昇は鈍く見えるが、総賃金は前年比+2%に向けて拡大が加速している。

2014、15年とは逆の展開になる16年

そして、これまでの株式や不動産などの資産価格上昇の好影響も徐々に染み出しつつある。2016年は、物価上昇が賃金上昇に若干遅れることによる実質賃金の上昇が消費活動を刺激するという、2014、15年とは逆の展開になっていくと考えられる。

しかし、そのような需要の拡大が、物価を再び押し上げるまでに至るにはかなりの時間がかかる。コアCPIの前年同月比は1-3月期以降は持ち直すとみられるが、2016年末までに+1%程度まで戻るのが精一杯であり、物価上昇のモメンタムは「2016年度後半」の2%の物価目標の達成を目指す日銀が想定するよりかなり弱いとみられる。

失業率が3%を下回る水準に更に低下し、労働需給のかなりの引き締まりが賃金上昇を強くし、賃金インフレと消費活動の拡大が牽引する形で物価上昇が加速していくことが、2%の安定的な物価上昇の達成の必要条件だろう。しかし、2017年4月に消費税率の再引き上げがあるため、再び消費活動は一時的に軟調になると考えられる。そうなると、物価上昇率の加速にはもう一サイクル必要となり、2%の物価上昇の実現は2019年ごろになるとみられる。

「消費税が景気を下押しする効果を持ち、かつ、そのマイナス効果が物価にも下押し圧力をかける」という原田日銀審議委員の指摘は正しいと考える。政府・日銀の中で、これまで消費税率引き上げが物価目標の達成を遅らせるという当然の認識、そして議論がなかったことには驚く。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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