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(写真=PIXTA)

史上空前の超低金利で、住宅ローンを借りるには絶好の機会が訪れていることは周知の通り。しかしながら、次第にそのタイムリミットが近づいているようだ。というのも、早ければ2016年中にも、金利情勢などに変化が生じる可能性がある。つまり、最も有利に住宅ローンを組めるのは、今がラストチャンスとなるのかもしれないのだ。

2016年は米国への資金流入が加速するか

まず、日本国内の金利水準がとてつもなく低いのは、日本銀行(日銀)が異次元レベルの金融緩和を続けているからだ。その目的は、物価が下がり続けて経済活動が収縮していくデフレ現象から脱却するためである。

こうした金融政策に伴って日本の金利が史上最低水準まで低下している一方で、対照的に米国は緩和から引き締めへと転換する局面を迎えている。2015年12月6日、FRB(連邦準備制度理事会)はフェデラル・ファンド・レートの誘導目標を0.25%引き上げることを決定した。

その結果、今後の米国金利は上昇傾向を示すことになる。水が高いところから低いところへと流れるのとは逆に、利益を求める投資マネーは金利が低い国から高い国へと流れていくものだ。

米国への資金流入が加速し、外国為替市場では金利が低い円を売って金利が高い米ドルを買う動きが顕著になりがち。そうなると、国際的に円の価値が下がって米ドルの価値が上がる「円安(ドル高)」が進んでいく可能性が高い。

日本国内よりもグローバル市場における売上が大きなウエートを占める自動車などの外需産業にとって円安は追い風だが、過度に進むと日本経済全体ではマイナス面も目立つようになる。たとえば、日本は資源のほとんどを輸入に依存しており、その調達コスト(輸入物価)の上昇が深刻化してしまう。住宅関連素材も当然値上がりすることになる。

日銀は極端な円安を望んではいない

昨年6月10日、衆院財務金融委員会の質疑応答で、黒田日銀総裁は当時の為替相場について「実効レートではかなり円安の水準になっている」と指摘したうえで、「これ以上の円安は、普通に考えればありそうにない」と発言した。この発言が出てくる直前の為替レートが1ドル=124円台後半から125円であったことから、同水準を「黒田ライン」「黒田バリア」と呼ぶ向きも少なくない。

黒田日銀総裁がどのような意図で先の発言を行ったのか、実際のところは分からない。しかし、極端に円安が進むことは日本経済にとっても必ずしもプラスに働くとは限らないし、状況によっては金融政策のスタンスにも何らかの変化が生じる可能性を残している点には十分な注意が必要といえる。

消費税引き上げで駆け込み需要も

上記の通り、①為替市場で円安が加速する可能性があること、②極端な円安は住宅関連素材の輸入価格の高騰を招く恐れがあること、③さらに日銀の金融スタンスに何らかの変化が生じる可能性があること…を考え合わせると「そろそろマイホームを手に入れたい」と検討している人は、なるべく早めにアクションを起こすのが賢明かもしれない。

それでなくとも、2017年4月には消費税が10%に引き上げられる予定で、その半年前までに駆け込みでマイホームを購入しようとする動きが活発になる可能性が高い。こうして需要が旺盛になる局面は、むしろ買い手でなく売り手の市場となりがちである。

だとすれば、2016年中できるだけ早いうちに動いたほうが賢明といえないだろうか。何より、金利差はたとえ1%の違いであっても軽視できない。

たとえば5000万円を借入期間35年で借り入れた場合、3%だった金利が4%に上がると月々の返済額は約2万9000円アップし、返済総額は1200万円以上も増えてしまう計算となる。

マイホームを手に入れるという行為はまったく同じでも、いつどのような条件で住宅ローンを組むのかによって、かかってくる費用は想像以上に大きく異なってくるわけだ。金利が高くなってからマイホームを買ったとしても、その直後はまだ返済が始まっていないから、特に不都合は感じないはず。だが、現実にはそれから何十年もかけて、金利上昇前なら負担しなくて済んだ大金を払っていくことになりかねない。その意味では、いま住宅ローンが「絶好の借り時」と言えるだろう。