(写真=Thinkstock/Getty Images)
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原油安のトレンドが2016年に入っても落ち着く気配を見せない。ニューヨーク原油先物相場では約12年8カ月ぶりの安値となる1バレル=26ドル台まで下落した。石油輸入国の日本や、原油価格の低下に伴う物価下落の恩恵を受ける消費者の目線からは、メリットもありそうだ。一方で、デフレ脱却をめざして、量的・質的金融緩和を継続している日銀にとっては、原油安は2%の物価上昇率を達成する上で大きな足かせだ。

さらに、足下の原油安は産油国の財政状況が悪化。産油国の政府系ファンドが先進国の株式市場から資金を引き揚げる動きを加速させ、世界同時株安に陥っている。また、中国経済の減速懸念も高まり、世界経済の後退による原油需要の落ち込みも価格低下に拍車をかける。今回は原油価格に影響を与えそうな3つの要因をさらに追いかける。

新たな巨大産油国アメリカの台頭

2014年夏ごろの原油価格は1バレル=100ドルを超える水準にあったが、それ以降は下落傾向が止まらない。時を同じくして、アメリカはシェール革命での盛り上がりを見せており、40年ぶりに原油の輸出が解禁されることになった。新たな石油輸出国・アメリカの生産量は石油輸出機構(OPEC)の盟主サウジアラビアを抑えて世界トップに躍り出た格好だ。

輸入国であったアメリカが、これにより、石油輸出国の仲間入りを果たすという大きな変化に帰結したことになり、このアメリカの原油輸出解禁措置が、世界の原油供給量を引き揚げ、供給過剰につながるとの観測が広がり、世界の原油市場への供給量が増えたことになる。

一方、新たな産油国の登場をOPECのメンバーは冷ややかな目で見ていた。サウジアラビアの原油生産コストは1バレル4~10ドル程度とされ、アメリカのシェールオイルのコストは60ドル程度。足元の原油価格では、中東では、まだ採算ラインを上回るものの、シェールオイル採掘業者にとっては、厳しい状況だ。シェールオイルの採算ラインは2020年までに50ドル程度まで下がるとの見通しもあるが、低い水準にとどまる原油価格は、シェール事業者にとって厳しい試練を課しているともとれる。

一例が、テキサス州でシェール開発を手掛けていたWBHエナジーの経営破綻だ。一方で、テキサス州で創業していた同シェールオイル事業者の経営破綻は驚くニュースだったものの、ドミノ倒しで産油量が大きく落ち込むといった事態にも発展していない。

アメリカの石油輸出国化に併せて、原油価格の下落局面の定石が変わっている点も忘れてはならない。原油安になれば従来は、OPECが生産調整をして、原油価格を下支えするのが常だったが、今回、サウジアラビアは減産調整に応じず、産出量を維持しており、原油の供給量が大幅に減る可能性も低そうだ。

原油価格の下落は、中東の産油国にとっては、国家歳入に直接影響を及ぼすため、原油の生産を抑えたいはずだが、新たなライバルとなったアメリカを振るい落とすためなのか、価格競争を繰り広げている。両者のチキンレースが続き、原油価格にも影響しているとの見方も成立しそうだ。

新たなキープレイヤー・イランの市場参入

新たな火種となりかねないのがイランだ。これまで過去の核開発に伴い、欧米から経済制裁を受けてきたが、1月に制裁解除が発表された。人口約8000万人の巨大なマーケットに、商機を伺う企業も多いが、注目すべきは、イランが原油確認埋蔵量世界4位の産油国という点で、すでに輸出拡大を目指すことを明らかにしていることだ。

世界の原油市場は2015年10-12月期で約170万バレルの供給過剰状態で、経済制裁解除を受けたイランが産油量を増加させ、輸出拡大を促進するとさらに供給がたぶつく。イランの石油輸出量の拡大は、原油価格へのさらなる抑制要因ともなりえ、イランの経済制裁解除を手放しに喜べない可能性もある。産油量の増加を抑えたいところだが、足並みが揃っていない上に、イランとサウジアラビアが宗教対立に端を発して国交を断絶したこともOPECに暗い影を落としている。

一方で、イランの原油生産量は、経済制裁の影響から、日量約300万バレルに留まるものの、石油埋蔵量は世界で第4位と、決して少なくない原油を抱えているのだ。経済制裁解除の措置を受けて、イラン政府は産油量を1日あたり50万バレル増やすように指示を出しており、供給量を増やす要因の一つに数えられそうだ。

アラムコのIPOでOPECの影響力低下か?

原油価格の下落は、産油国にとっては直接国家財政への打撃となる。サウジアラビアは、財源の約75%が石油関連の収入で、原油安の影響から2016年の国家予算は10兆円を超える財政赤字に陥る見込み。こうした事態を受け、同国政府は水道や電気料金などの補助金の見直しに迫られている。

さらに、国営石油企業のサウジアラムコの新規株式公開(IPO)を検討していることも明らかにして、波風を立てている。サウジアラムコは、国内で約6万人の従業員を抱え、株式を上場した場合、時価総額が数兆ドルに達する可能性も指摘されている。

サウジアラムコが民営化されると、懸念されるのがOPECの影響力の低下だ。これまでは産油国が原油価格の動向に合わせて生産調整をし、原油価格を維持してきたが、サウジアラムコが民間企業の手に委ねられれば、合法的な国際カルテル集団であるOPECが一民間企業に対して及ぼせる価格の影響力は弱まると見る向きもある。

つまり、アラムコがIPOによって莫大な資金を短期的に調達できる一方で、OPECの調整機能が弱体化する可能性もあるということだ。そうすれば原油価格がさらに下落する可能性もあり、民営化はサウジアラビアにとって諸刃の剣になりかねず、産油国の動向から目が離せない展開がしばらく続きそうだ。(ZUU online 編集部)

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