(写真=PIXTA)
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結果の概要:雇用増加数は前月から大幅低下、市場予想も下回る

2月5日、米国労働省(BLS)は1月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は前月対比で+15.1万人の増加(*1)(前月改定値:+26.2万人)に留まり、前月から伸びが大幅に鈍化、市場予想の+19.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も大幅に下回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.9%(前月:5.0%、市場予想:5.0%)と、こちらは前月から低下、市場予想も下回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(*2)は62.7%(前月:62.6%、市場予想:62.7%)と前月から上昇、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。

結果の評価:雇用増加ペースは鈍化も、その他指標改善で労働市場の回復持続を確認

1月の雇用者数は、10-12月期の月間平均増加数+27.9万人から伸びが大幅に鈍化する結果となった。10-12月期の水準は持続可能でないとみられるほか、当該期間の失業保険新規申請件数などからは、1月の雇用鈍化は予想されていた。もっとも、10万人台半ばはやや弱い印象である。雇用増加ペースがこの水準で定着してしまうか来月以降の統計で確認する必要がある。

一方、失業率は前月から改善し08年2月以来の水準に低下したほか、FRBの目標失業率に到達した。1月の低下は労働参加率の改善を伴っており、労働需給がタイトになっていることを示す良い内容である。

さらに、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前年同月比+2.5%(前月:+2.7%)と、上方修正された前月は下回ったものの、市場予想(+2.2%)を上回ったほか、前月比では+0.5%(前月:横這い)と15年1月以来の高い伸びとなった(図表1)。

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このようにみると、1月の結果は雇用者数こそ弱かったが、家計調査や賃金上昇率はいずれも労働需給がタイトになっていることを示しており、労働市場の質も含めた改善が持続している。

米国では内需主導型の景気回復が持続しているものの、中国や資源国を中心とした新興国経済で減速懸念が強まっているほか、ドル高も続いており、米国経済を取り巻く環境は厳しさを増している。このため、米景気回復の持続性を判断する上で引き続き労働市場の動向が注目される。

事業所調査の詳細:人材派遣が大幅に減少

事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+11.8万人(前月:+19.7万人)となり、前月から大幅に伸びが鈍化した(図表2)。

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サービス部門の中では、人材派遣が▲2.5万人(前月:+2.5万人)と前月から大幅に減少したこともあり、専門・ビジネスサービス+0.9万人(前月:+6.0万人)と伸びが鈍化した。一方、小売業+5.8万人(前月:▲0.1万人)や、娯楽・宿泊+4.4万人(前月:+3.1万人)は前月から伸びが加速した。

財生産部門は+4.0万人(前月:+5.4万人)と、こちらも前月から伸びが鈍化した。資源関連は▲0.7人(前月:▲0.7万人)と減少が続いているほか、建設業で+1.8万人(前月:+4.8万人)と伸びが鈍化した。一方、製造業は2.9万人(前月:+1.3万人)と、こちらは前月から伸びが加速した。

政府部門は▲0.7万人(前月:+1.1万人)となった。内訳をみると連邦政府が▲0.8万人(前月:+0.8万人)となったほか、州・地方政府が+0.1万人(前月:+0.3万人)となった。

前月(12月)と前々月(11月)の雇用増(改定値)は、前月が+26.2万人(改定前:+29.2万人)と▲3.0万人下方修正された一方、前々月は+28.0万人(改定前:+25.2万人)と+2.8万人上方修正された。また、今月は昨年の年次改定値も公表され、昨年の雇用増加数が月平均で+0.7万人上方修正された(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って2月3日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+20.5万人(前月改定値:+26.7万人、市場予想:+19.5万人)と市場予想は上回ったものの、前月から伸びが鈍化した。この結果、ADP社とBLS(事業所調査)の雇用者数は前月から伸びが鈍化しており、両者は整合的な動きとなった。

1月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.39ドル(前月:25.27ドル)となり、前月から12セント増加した。また、週当たり労働時間も34.6時間(前月:34.5時間)と、こちらも前月から+0.1時間増加した。その結果、週当たり賃金は878.49ドル(前月:871.82ドル)と、前月から大幅に増加した(図表4)。

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