日銀のマイナス金利政策を受け、住宅ローンの金利を過去最低水準に引き下げた銀行も出ており、今後も地方銀行やインターネット専業銀行なども金利の引き下げが予想される。
低金利で推移しているから住宅ローンは今がチャンスだと耳にする方も多いだろう。これからマイホームを購入する場合、住宅ローンは低金利で借入れができるのは分かる。しかし、すでに住宅ローンの借り入れを行なっている場合は借り換えた方が良いだろうか。あるいは、借り換えしたほうがいい人とはどのような人なのか。ここでは、借り換えを検討する際に考えるべきことをメリット・デメリットもふまえて紹介する。
住宅ローン借り換えの目安
住宅ローンの借り換えの一般的な目安としては、借り入れしているローンと借り換え後のローンの金利差が1%以上、ローン残高が1000万円以上、残りの返済期間が10年以上などの条件を満たせばメリットがあると言われている。また条件が全部満たしていなくても、いずれかの条件が突出していれば借り換えのメリットが出る場合もある。
注意したいのは、現在のローンの金利より低い金利に借り換えればメリットが出るとは限らないということだ。なぜなら、住宅ローンの借り換えの際も新規の借り入れと同様に諸費用がかかる。主に事務手数料、契約書貼付印紙税、保証料、登録免許税、登記費用、司法書士手数料、団代信用生命保険料等である。
金利差だけを見るのでではなく、借り換えした際の諸費用を支払っても借り換えるメリットがあるのかどうかを確認しなければならない。
住宅ローン返済の借り入れシミュレーション
10年前にマンションを購入し、住宅ローンを返済中のAさんのケースでシミュレーションしてみていこう。
Aさん(45歳)は10年前に3400万円を35年固定で金利2.73%を元利均等返済にて借り入れた。月々の返済額は12万5780円(ボーナス払い無し)、ローン残期間25年、ローン残高2732万6322円である。
現在のローン残高2732万円をローン残期間25年で固定金利1.7%にて借り換した場合のシミュレーションはどうなるだろう。月々の返済額は11万2176円となり毎月約1万3000円返済額が減少する。また現在の総返済額3773万4000円が借り換え後は3369万5489円となり、仮に諸経費を70万円と考慮しても333万8511円のメリットが出る。
3つの金利タイプを見直すことも効果的
全期間固定と同じ金利タイプでの借り換えシミュレーションでもメリットがあるが、借り換えの際には金利のタイプを見直すことも検討したい。金利タイプには全期間固定金利型、固定金利期間選択型、変動金利型と3つのタイプがある。この金利タイプをしっかり理解した上で、金利タイプを選択することも重要である。金利タイプの特徴とメリット・デメリットについて把握しておきたい。
【①全期間固定金利タイプ】
借り入れ時の金利が完済までの全期間固定。メリットは完済まで返済額が確定され、資金計画が立てやすい。デメリットとしては、他の金利タイプに比べて金利水準が高めという点だ。
よって借り入れ後に金利推移が低下していった場合、他の金利タイプよりも返済額が多くなる可能性がある。先ほどのAさんのケースの場合、10年前からみても低金利で推移してきたため、同じ全期間固定金利タイプの借り換えでも総支払総額が大きく変わってくる。
【②固定金利期間選択タイプ】
当初定めた一定期間について、借入れ時の金利が適用される。メリットは返済額が一定期間変わらないので、ある期間については資金計画が立てやすい。デメリットとしては当初定めた一定期間終了後に金利が上昇した場合に毎月の返済額が上昇する可能性がある。
【③変動金利タイプ】
短期プライムレート(金融機関が優良企業向けに対して、1年以内の短期で貸し出す際に適用する最優遇貸出金利のこと)に連動した金利が適用され、借り入れ後は定期的に金利が見直される。
メリットは現状の様に、低金利で推移していけば返済額は減少し、過去10年を振り返ってみると結果的には変動金利で借り入れしていた方が総支払額は低い可能性は高い。反面、適用金利が上がると返済額が増加し、借り入れ時に将来の返済額が確定しないため、返済計画はたてにくい。
①の全期間固定金利タイプ
Aさんの場合、10年前に借り入れた当時は子供が小学校1年生であり、毎月の返済額が確定させて教育資金の準備を計画的にしたいという考えから、全期間固定金利タイプを選んだ。10年後の今は子供も高校生になり、教育資金の準備もメドがついている。さらに教育資金以外にも預金がある。よって変動金利を選択し、金利が上昇し返済額が増加した場合においても預金で負担できるのではと考えている。
③の変動金利タイプ
では、変動金利で借り換えした場合のシミュレーションをみてみよう。ローン残高2732万円を変動金利0.75%で借り換えした場合、月々の返済額は9万9899円となり、現在の返済額12万5780円と比較すると月々の返済額が約2万6000円も減少する。
低金利で推移していけば固定金利から変動金利への金利タイプを変更した借り換えは大きなメリットを感じる。ただし、金利が上昇し、返済額が増えた場合でも返済可能であるかを何パターンかシミュレーションしておくことも大切である。
仮に金利が3%になると月々の返済額は12万9554円となる。4%に金利が上昇した場合は月々の返済額は14万4205円。5%に上昇した場合は月々15万9709円となる。
金利は予想できないが金利が上昇した場合に、預金で上昇金額を補えるのか、または繰り上げ返済や一括返済をして借入れ金額を減らすことができるのか等、いくらまで返済額が上昇しても問題なく返済が可能かどうかの基準を知っておきたい。また借り入れ後も住宅ローンの金利の動向を把握しておくことは重要である。
借り換えができないケースも想定しておこう
ここまでは借り換えできる前提でのシミュレーションをしてきたが、借り換えられないケースもあるので留意してほしい。借り換えの際もローン審査がある。
治療中で住宅ローンの借入れの条件である団体信用生命保険に加入ができない場合や、車のローンや教育ローンなどの借り入れ金額によっては、希望の金額まで借り入れができないこともある。あるいは、住宅ローンの返済を何度か引き落としできなかったなどが原因でローン審査に通らず、借り換え不可能な場合もある。
まずは住宅ローンのシミュレーションから
住宅ローンは自分自身のライフプランから、何歳までに返済すればよいのか、どの金利タイプが良いのか、諸経費を含めてシミュレーションをしてほしい。金融機関のホームページ上で必要事項を入力するだけで住宅ローンの借り換えシミュレーションができるので、それぞれ各金融機関の金利もチェックしながら借り換えのメリットがあるのかどうかを確認するべきだ。
もちろん店頭でもシミュレーションをしてくれるので、返済中の住宅ローンの借り換えをおこなった方が良いのか気になっているのであれば、いくつかの金融機関においてシミュレーションすることをすすめる。メリットがあり、かつローン審査も問題なく通るのであれば、早々に借り換えを検討してほしい。
今関 倫子 ファイナンシャル・プランナー (AFP)
外資系保険会社勤務中にファイナンシャル・プランナー(FP)を目指し、AFP(日本FP協会認定)資格取得後、独立系FP事務所に転職。女性を中心に年間のべ200件以上のマネー相談を受け、多くの経験を経て独立。個人マネー相談、執筆、マネーセミナーを中心に活動中。
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登録FP。