CIC(貸金業法指定信用情報機関)によると、2015年12月の不動産担保ローン残高は1233億円に上る。住宅ローン(1兆4964億円)と比べるとその規模は小さく感じるが、マイカーローン(64億円)や借り換えローン(947億円)と比較すると存在感の大きさが分かる。とはいえ、まだまだ一般的ではない不動産担保ローン。その概要や活用方法を紹介したい。

他の借り入れと何が違うのか

不動産担保ローンとは、不動産を担保に銀行などの金融機関からお金を借り入れることだ。フリーローンやカードローンなど他の借り入れと何が違うのだろうか。まずは特徴を確認しよう。

【特徴1】高額な借り入れが可能
担保価値の6~8割程度が目安といわれ、借り入れ上限は1億程度とする金融機関が多い。不動産価格によっては高額な借り入れも可能だ。

【特徴2】低金利で借り入れ
不動産担保ローンの金利は3~10%程度と低め。不動産担保ローンは通常大きな金額を長期間借り入れるため、金利によって総返済額はかなり変わるため金利は重要な要素だ。なお、金利は固定金利、期間限定固定金利、変動金利と金融機関によって異なる。借り入れ時だけでなく長い目で金利を選択したい。

【特徴3】総量規制の対象外
総量規制とは、借り入れ総額が年収の3分の1までに制限される仕組みのこと。住宅ローンや自動車ローン、そして不動産担保ローンはこの規制の対象外となり、年収による制限はない。そのため複数の借り入れをまとめることができ、高額な借り入れも可能となる。

そのほか、原則として用途が限定されない。20年~35年の長期借り入れが可能、といった特色がある。続いて活用方法についても見ていきたい。

不動産担保ローンの活用法とは

不動産担保ローンが向いているのはどんなケースだろうか。

【既に複数の借り入れがある人】
限度額の大きい不動産ローンなら、複数の借り入れをまとめることも可能だ。低い金利でまとめられれば返済額が抑えられるうえに、返済管理も容易になる。

【会社員、もしくは返済の見通しを持っている人】
借り入れ金額が大きく、かつ返済期間が長いため安定した収入のある人が向いているだろう。例えば、継続した収入が見込める会社員、手を付けたくないだけで一定の預貯金を持っている人などだ。ビジネス資金として利用する場合は堅実な事業計画のもと利用したい。

【手持ち不動産の売却か賃貸収入を考えている人】
不動産を売却予定だが買主が見つかるまでのつなぎ融資が欲しい、高く賃貸に出するためリフォームをしたいがその資金がない、などの場合にも有効だ。立地がよく、将来的に売却もしくは賃貸収入が見込める場合は活用度が高い。ただし、借り入れ後すぐに返済が始まるので一定額のキャッシュは確保しておくべきだろう。

そのほか、子どもの大学進学資金や手術費用など一過性の支出にも向く。ただし、支出が長期におよぶ場合は返済が難しくなる可能性が高いことを覚えておこう。

活用方法は多くあるが、不動産担保ローンは抵当権の設定が必要となる。つまり、もし返済ができない場合は不動産の所有権は銀行などのものになってしまう。そのため利用の際は慎重な姿勢が求められる。気を付けるべき点についても触れておこう。

理解しておきべき注意点は

不動産を持っていても必ず融資が受けられるわけではない。住宅購入時のローンが残っているため抵当権があったり、立地、与信状況によっては融資を受けられない可能性もある。それを理解したうえで、以下の注意点を見てほしい。

【仮審査と事前審査】
不動産担保ローンには審査が必要となる。通常「事前審査」「本審査」「契約」という流れで借り入れを行う。金融機関にもよるが、場合によっては1ヶ月程度かかる場合も。当然、審査の結果借り入れが受けられないこともある。できれば複数の金融機関に仮審査の申し込みをしておくと良いだろう。

また、金利は借り入れ実行日の金利が適用されることとなるので、申し込みから契約までの金利の動きには注意しておこう。

【諸経費が発生する】
不動産担保ローンでは、借り入れ時、諸経費が発生する。事務手数料、印紙税、登記費用などだ。事務手数料は借入金額に応じて1.5%~2.16%程度の金融機関が多く借入額によって費用の額が変わることに注意しよう。

返済時の経費として繰上げ返済手数料繰上げ返済手数料も考慮しておこう。無料の金融機関もあるが、繰り上げ返済額の約3%を手数料としている銀行も存在する。

【年齢リスク】
返済期間が長いため、通常年齢要件がある。完済時の年齢が75歳~80歳までという上限が多い。年齢が上がれば上がるほど返済期間は短くなり、不動産担保ローンのメリットを享受しにくくなる。

【不動産を失うリスク】
何といっても一番のリスクは不動産を失うことだろう。もちろん、順調に返済していければ問題ないのだが、不測の事態が起こらないとも限らない。基本的には返済が厳しくなったら早めに相談することだ。もし不動産を手放すことになっても、強制執行ではなく任意で売却するほうがより高く売却できるといわれている。最悪のケースは家を失ったうえに借金が残ってしまうことだ。それを防ぐためには、無理に返済を続けるよりも「より高く」売るための方策を練ったほうが得策だろう。

以上、不動産担保ローンの仕組みや注意点を解説したが、不動産担保ローンも差別化が進んでいる。銀行によっては不動産は本人名義でなくとも「家族名義なら可」であったり、インターネットだけで申し込みができたりするなど、内容や特色が異なる。金利や借入金額だけ重視するのではなく、商品性も十分理解して利用することが求められる。よりご自身のニーズに合った商品を探し、手持ちの資産(不動産)を上手く活用してほしい。

横山 晴美(よこやま はるみ)
ライフプラン応援事務所代表
2011年にFP資格取得。2013年 ライフプラン応援事務所 を立ち上げ独立FPとして活動。住宅・子育て・老後などの「お金の問題」解決を目指し、相談業務・マネーセミナー等を行っている。