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投資の応用
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【或る銀行員の独白】

いま銀行窓口で外貨建保険が売れる理由

外貨建保険,銀行窓販
(写真=Thinkstock/Getty Images)

銀行の窓口で保険を勧められるのは、今や日常的な光景となっている。保険の取扱いが始まった当初は、銀行員にとってもどこか敷居が高かった保険であるが、今や欠かすことのできない主力商品となっている。私自身も今は積極的に保険を販売している。なぜ、銀行員は積極的に保険を販売するのだろう。保険を勧める担当者の心理を明らかにしよう。

銀行にとって保険販売は重要な収益源となった

2007年、生命保険や損害保険などあらゆる保険商品が、銀行の窓口で購入できるよう全面解禁された。この時はまだ販売に携わる銀行員も恐る恐る保険を販売していた。全面解禁されたとはいえ、銀行における保険の販売には様々な規制が設けられている。弊害防止措置といわれるものであり「保険募集制限先規制」「担当者分離規制」「タイミング規制」「非公開情報保護措置」「銀行の特定関係者に対する規制(知りながら規制)」といった規制が設けられている。銀行が融資する側であるという強い立場を利用して、融資先などに圧力販売を行うことを防ぐために設けられた規制である。こうした規制もあり、窓販解禁直後、保険は必ずしも積極的に販売したい金融商品では無かった。

現実的な問題として保険の販売により銀行は一時的に手数料収入を得ることができるものの、長期間(終身保険であればさらに長期にわたり)その資金に手を付けることができなくなる。投資信託であれば、相場の循環により、売買を繰り返し手数料を得られる可能性もある。だから、私も保険の販売には消極的だった。

しかし、いつの間にか状況は一変した。私も今では積極的に保険を販売している。競争の激化とともに保険の商品性が随分と改められた。たとえば、外貨で運用することで高い利回りでの運用を行えるのだが、運用で増えた資金を定期的に受け取ることができる商品もある。

投資信託の分配金は高い分配を維持する必要から、元本部分を削りながら分配金を出し続けている点に批判が高まっている。しかし、上述の保険では元本部分が減ることは無い。契約時に運用の目標を設定し、目標を達成すれば保険会社が自動的に運用をストップしてくれるという機能を取り入れている保険もある。株式投資や外貨投資でうまく利益確定ができずに、残念な思いをしたという人はたくさんいる。こうした人にはありがたい機能だ。保険販売を後押ししている要因の一つに、商品性の向上があるのは間違いない。

不透明な保険の販売手数料

保険販売を後押ししている最も重要な要素は手数料収入だ。当然だが、銀行員には、どれだけの販売手数料を獲得するか、という目標が課される。一般的に投資信託よりも外貨建保険で得られる手数料ははるかに高額である。勿論、投資信託の保有者は購入時の購入手数料だけではなく、当信託の保有期間中は信託報酬を払い続けることになるし、解約時にも手数料や信託財産留保金という理解に苦しむコストを負担するわけだが、銀行の販売担当者に課される目標はあくまで販売時の手数料である。

保険会社にとって銀行窓販からの収益は、無視できない規模となっている。必然的に保険会社間の競争も激化している。その結果、商品性の向上だけでは無く、保険会社が銀行に支払う手数料も増加している。こうした手数料は実に不透明な仕組みで、保険会社と銀行の間でこっそりと決められる。同じ商品であっても、銀行間で差がある場合もある。新商品の取扱に合わせて一時的に特定の商品の販売手数料が引き上げられることもある。その結果、大きな目標を背負わされた銀行員が手数料率の高い商品を優先的に販売するようになるのは当然のことだ。複数の保険会社の商品から顧客ニーズに最も相応しい保険を提案できることが「銀行窓販」の売りであるが、実際には必ずしも謳い文句通りでは無い。

政府・日銀への不信感で外貨建保険のニーズ高まる

生命保険にはさまざまな機能がある。保障、相続対策、そして銀行窓販で顧客が最も重視するのは運用だ。少なくとも私の実感として、日銀の「マイナス金利政策」発表以降、外貨建保険のニーズが急速に高まっている。「100万円の定期預金で得られる金利は1年間でたった10円!」新聞やテレビが「マイナス金利」をセンセーショナルに報道してくれるおかげで、預金者の考え方は変化し始めた。ある程度のリスクを取っても運用する必要がある。このままでは銀行預金も本当にマイナス金利が適用されかねない。そんな不安を抱く人が確実に増えている。

「マイナス金利政策」発表後の混乱するマーケットを目の当たりにした投資家の多くは、政府・日銀に対する不信感を抱き始めている。サプライズにばかりこだわる黒田日銀総裁の金融政策に対する視線は冷たい。もはや「アベノミクス」に対する期待感も失われてしまった。1年前、銀行や証券会社のパンフレットは、インフレに対抗するために株式投資や外貨建資産を持つ必要性を説いたものばかりだった。皮肉なことに今は信頼を失った政府・日銀の金融政策が外貨建保険の購入を促すこととなっている。

外貨建保険は銀行が得られる手数料という点からも銀行員が積極的に販売していることは上述したが、相場環境が不安定で見通しを立てにくいときにも販売しやすい商品であることも事実だ。5年、10年、さらには終身など長期保有が前提の商品であるため、販売直後に相場が想定とは異なった方向に動いても、それを多くの顧客は許容できる。投資信託ではそうはいかない。こうした点からも保険は販売しやすい金融商品である。

銀行の保険窓販も透明性が求められる

私は銀行が積極的に保険を販売していることについて、決してそれが悪いことでは無いと思っている。商品内容が決して悪いとは思わない。保険会社の競争が激化するなかで商品性が改善され、素直に感心させられるような商品もある。

しかし、その一方で手数料における不透明さが問題視されていることも事実だ。金融庁は生命保険協会に対して、手数料にかかわる情報開示への具体案をまとめるよう求めている。銀行が受け取る販売手数料が高すぎると、手数料を目当てに不要な保険を売る動きが強まりかねないとの判断が背景にある。日銀によるマイナス金利政策で銀行は収益が圧迫されることが予想される。収益の確保が難しくなった銀行が、保険販売による手数料稼ぎに力を入れるのではないかと金融庁は警戒しているのだ。

銀行が取り扱っている投資信託は手数料が開示されている。それに対し、契約者が支払う保険料には手数料も含まれており、どれだけの手数料を顧客が負担しているのか不透明だ。手数料が正確に分かれば顧客の商品選びにも役立つと考えることもできるが、販売する側にとってみるとやりにくくなるかも知れない。(或る銀行員)

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