子どもが生まれてすぐに学資保険に加入し大学資金を準備してきたつもりでも、実際は塾代、受験費用など想像以上に入学前に費用がかかり、学資保険で準備してきた金額では足りないということも。そんな時は奨学金や教育ローンの利用を考える人も多いだろう。
では、奨学金と教育ローンのどちらを使えば良いのか?奨学金と教育ローンのそれぞれの特徴や違いを解説していきたい。
奨学金もさまざま
奨学金制度は、能力のある学生に対して、学費や生活費を給与または貸与することで、経済的負担を軽減し、家計の事情により進学が困難な学生を支援することを目的としている。地方自治体や民間企業や大学独自などのさまざまな奨学金がある。
奨学金には「給付型」と「貸与型」があり、「給付型」は返済不要な奨学金で、「給付型」の奨学金制度を導入する大学も増えてきている。
例えば、慶応義塾大学の「学問のすゝめ奨学金」は、日本国内(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を除く)の高校出身者で父母の合算収入が1000万円未満、入学後は自宅外から通学する予定などの申請資格が設けられている。奨学金額は年額60万円(医学部は90万円、薬学部薬学科は80万円)で毎年の申請、審査により4年間(医学部、薬学部薬学科は6年間)継続で支給してくれる。奨学生候補は学業成績、家計状況、高校の推薦内容に基づき書類審査にて決定される。
返済義務がある「貸与型」の代表的な奨学金には、日本学生支援機構の奨学金がある。貸付を受けるには学力と収入の基準がある。「第一種奨学金」の無利息タイプと「第二種奨学金」の利息の付くタイプ、これらと合わせて入学の一時金として利用できる入学時特別増額貸与奨学金(利息付)があり、奨学金の種類ごとに貸与額が設定されている。
「第一種奨学金」について、例えば私立大学・自宅通学の場合は月額3万円または5万4000円、私立大学。自宅外通学の場合は月額3万円または6万4000円と設定されている。
「第二種奨学金」については「第一種奨学金」より、ゆるやかな審査基準になっており、大学の場合は月額3万円、5万円、8万円、10万円、12万円(私立大学の医・歯学部は4万円、薬・獣医学2万円の増額可能)より選択する。
利子は「利率固定方式」または「利率見直し方式」から選択し貸与終了月の貸与利率が適用される。どちらの方式も利率は年3%が上限で、在学中及び返済期限猶予中は無利息となっている。2016年1月に貸与終了した場合に適用される年利は「利率固定方式」は0.49%、「利率見直し方式」0.1%と低利率となっている。奨学金の返済は、貸与終了月の翌月から数えて7カ月目から開始となる。
教育ローンの特徴は
教育ローンには、国の教育ローンなどの公的ローンと、銀行などの民間ローンがある。
審査基準は年齢、年収、勤続年数、他の借入状況、住宅ローンの返済状況など総合的に判断される。
国の教育ローンは日本政策金融公庫が融資する「教育一般貸付」である。例えば子ども1人の場合は790万円、子ども3人の場合は990万円などと子どもの人数により世帯年収の上限額が定められている。
融資限度額は1人につき350万円以内で、金利は長期固定金利で2016年2月10日現在、年利2.05%(保証料別)で、返済期間は15年以内。借入日の翌月または翌々月の返済希望日から返済開始となる。また在学中は利息のみの返済が可能で、在学中の返済負担を軽減することができ、卒業後に元金返済となる。
民間の教育ローンは主に銀行、労働金庫、JAなどで借りられ、商品によって無担保、有担保、固定金利、変動金利とさまざま。借入可能額は300万円または500万円を上限としている商品が多いが、中には有担保で3000万円まで借入可能としている商品もある。
2016年2月現在の大手メガバンク3行の変動金利の平均は年利3.8%(無担保、店頭表示金利)と、国の教育ローンと比較すると高い。
教育ローンと奨学金の比較。何が違う?
奨学金と教育ローンの大きな違いは、借り手である。奨学金は学生本人、教育ローンは保護者となる。また返済開始が奨学金は卒業後、教育ローンは在学中と返済開始時期も違う。
まずは返済不要の奨学金(給付型)を検討したいが、学力、世帯年収など審査基準が多くハードルは高い。また民間企業からの給付の場合、その企業に就職するなどの条件があるので、事前に調べておきたい。
また、奨学金(貸与型)は借り手である学生本人が就職してから返済していくため、自覚を持つことが何より大切である。教育ローンについては、金利は高いが審査から借入開始までのタイミングが奨学金に比べ早く、奨学金の審査が通らなかった場合に備えて申し込んでおくのも手だ。
奨学金(貸与型)、教育ローンいずれにしても返済期間は長期間となるため利用する際は返済計画をしっかり立てていきたい。
今関 倫子 ファイナンシャル・プランナー (AFP)
外資系保険会社勤務中にファイナンシャル・プランナー(FP)を目指し、AFP(日本FP協会認定)資格取得後、独立系FP事務所に転職。女性を中心に年間のべ200件以上のマネー相談を受け、多くの経験を経て独立。個人マネー相談、執筆、マネーセミナーを中心に活動中。
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