投資家やビジネスマンにとって、今後どの地域がさらなる経済発展を遂げるのか見極めるのは重要な意味を持つ。そこで、今回はかつてBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の台頭を予測した世界大手のコンサルティング会社・マッキンゼーの最近の世界の成長都市に関するレポート「アーバンワールド」をもとに、2025年までにさらなる成長を遂げる都市はどこかを探る。

都市部への集中が進む経済活動

まずは、世界全体の傾向から見ていくことにしよう。マッキンゼーのレポートによれば、2025年までに世界経済はGDP上位600都市への集中が進み、またそれ以外の都市の成長はほとんどないと言えそうだ。

マッキンゼーによれば、2007年においてGDPの上位600都市における人口は全世界の22%に相当する約15億人で、これらの都市から生み出される付加価値額は約30兆円だったという。2025年にはこのGDP上位600都市における人口は全世界の25%にあたる20億人にまで増え、生み出される付加価値額もおよそ60兆円にまで達しする見通しだ。

ちなみに、世界規模で見ても、全世界のGDPに占める比率も、50%から60%へ高まっていくとみられており、世界の付加価値の6割が都市部に集中することになりそうだ。

また、上位600都市の重要性は成長性という面でも群を抜いている。2025年までの経済成長のうち、60%がGDP上位600都市の経済発展によるものであるのに対して、601位~1000位までの400都市は全世界の経済成長にわずか6%ほどしか貢献しないとみられる。

日本でも東京への一極集中が問題となっているが、全世界でも上位の都市へと人と富が集中するという流れが生じると予測されているのである。

世界経済の成長をけん引するのはやはり中国

さらに、今後も経済成長の見込まれる中国の都市成長も目覚ましいとのマッキンゼーの予測だ。2025年までの経済成長率を比べると、上位25都市のうち、香港も含めれば15都市が中国の都市で占められるという。さらには、上位10都市に限っても、3位のニューヨークを除く9都市が中国の都市である。

また、こうした高い経済成長を遂げるがゆえに、GDPの額でも3位には上海が、5位には北京が、10位には深センがランクインするとみられている。上海の強みは、上海総合指数が存在していることからも分かるように金融の中心でありながら、研究機関も多く存在しており、経済力と科学技術力の両方を兼ね備えている点にある。

また、中国本土で西欧的なスタイルを持っている都市であるため、外国人の人材を惹きつけやすいというメリットもある。

北京には、中国最高峰の北京大学や清華大学をはじめとする大学・研究機関が豊富にあり知識の集中度が中国一であるという強みを持っている。また、知識を事業化させる仕組みも整っていることも今後の経済発展を支える原動力となるとみられている。

深センは上海や北京とは異なり有名な大学も研究機関も存在していない。しかし、比較的安価な労働力を活かして生産拠点として発展してきており、現在では世界2位のネットワーク機器会社ファーウェイをはじめとするハードウェアの新興企業が集まる場所へと変貌を遂げつつあるという。世界のハイテク工場化も深センの経済発展の原動力となっている様子だ。

力強さを残す米国・欧州のNY、ロンドン、パリ。そして、日本の東京は…

2025年までの経済成長の原動力は中国かもしれないが、欧米の各都市が第一線から退いたというわけではまだない。2025年時点においても、ニューヨークは世界最大のGDPを誇るとみられており、4位にはロンドンが、7位にはパリがランクインするとマッキンゼーは予測。まだまだ欧米の各都市も力強さを保つという未来像だといえる。

日本の東京も2025年のGDPは世界2位の規模を誇ると予想されており、まだまだ世界的に強い存在感を発揮できる位置にいると言えそうだ。

だからと言って安心することはできない。東京のGDP成長率が20位とそれほど高くはないと予想されているからだ。例えば、2025年におけるGDPランキングの3位につけている上海はGDP成長率で1位に立っており、うかうかしていると追い抜かされてしまう危険性をはらんでいる。また、それと同じぐらいに重要なのがニューヨークのGDP成長率だ。

ニューヨークは現時点においても極めて大きな経済規模を誇っているにもかかわらず、GDP成長率で4位にランクインしている。こうしたことから東京も経済成長を遂げていかなければ、次々と下位の都市に追い抜かれるだけでなく、ニューヨークと大きな差をつけられてしまうことになりかねず、今後のビジネス環境のさらなる整備も求められていきそうだ。(ZUU online 編集部)