ETF(上場投資信託)を活用したインデックス運用を考える際に、選択肢としてまず思い浮かぶのが日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)であろう。両者は日本を代表する株価指数として広く認知されており、機関投資家はもちろん、投資初心者から上級者まで多くの人が取引に参加している。では、この2つの指数には、具体的にどのような特徴があるのだろうか。歴史的な背景を交えながら解説したい。

日経平均株価は歴史ある株価指数

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(画像=(写真=PIXTA))

日経平均株価は、東京証券取引所が設立した1949年からデータが算出されている歴史ある株価指数で、東証1部に上場する代表的な225銘柄で構成している。各社の発行済み株式数を考慮せず、基本的には株価を足して銘柄数で割った単純平均に近い指数である(※実際の指数算出では「みなし額面による修正」や「除数の修正」を行い、過去との連続性を保っている)。当初の名称は東証第1部修正平均株価で、取引所が算出していた。

東証第1部修正平均株価は、株価が高い「値がさ株」の影響を受けやすい特徴があった。そこで東証は1969年から新しい株価指数としてTOPIXの発表を始めた。

TOPIXは東証1部に上場する全銘柄の時価総額(株価×発行済み株式数)の変化を指数化したものだ。つまり、基準日である1968年1月4日の時価総額を100とし、現在の時価総額がどれだけあるかを指数として示している。TOPIXの導入に伴い、東証第1部修正平均株価の算出は日本経済新聞社が引き継ぎ、幾度かの名称変更を経て現在の「日経平均株価」に落ち着いた。

ETFや先物・オプション取引が活発

現在、日経平均株価は日本株の値動きを示す代表的な株価指数として、最も知名度が高く、世の中で広く受け入れられている。一方のTOPIXはメディアのニュースでは存在感が薄いが、機関投資家など運用のプロに重視される傾向にある。先に述べたように、日経平均は値がさ株の影響を受けやすいが、TOPIXは金融株など時価総額の大きい銘柄の動きを反映しやすいのが特徴である。両指数とも、ETFでの取引はもちろん、先物やオプションでも日々活発な売買が繰り返されている。

日経平均株価は値動きが大きいため、ヘッジファンドなどの短期筋による先物やオプションの売買が集まりやすい。このため、国際情勢や外国為替相場など、外部環境の変化にあわせて日本株全体が大きく動く場合は、まず日経平均株価が先行して動き、TOPIXが後から追随するパターンが良く見受けられる。

市場動向を読むうえで参考となる「NT倍率」

ところで、日経平均株価をTOPIXで割った「NT倍率」をご存知だろうか。両指数は採用銘柄や計算方法が異なり、値動きにズレがある。前述の通り、相場が動くタイミングでは日経平均株価が先行し、TOPIXが追随する傾向にあるが、NT倍率はこのズレを可視化したものであり、株式市場の動向を読むうえで参考となる。

NT倍率は10倍台で推移した後、2012年にアベノミクスが始まる頃に12倍に上昇した。2013年12月に終値ベースで12.7倍に達する場面も見られたが、結局長続きせずに下落している。その後は12.5倍前後で頭打ちとなる傾向にある。

現在、日経平均株価に大きく影響する値がさ株は、ソフトバンク <9984> 、ファーストリテイリング <9983> 、ファナック <6954> の3銘柄だ。日中に日経平均株価が値を飛ばし、NT倍率が上昇する時は、これらの値がさ3銘柄か、日経225先物に短期筋の仕掛け的な売り買いが入ることが多い。また、日経平均株価は値がさ株の個別材料で上下することもある。たとえば、ファーストリテイリングが証券アナリストの予想を裏切る業績予想を示し、同社の株価が反応すると日経平均株価も連れて動くケースがみられる。

NT倍率は2つの指数を加工したものであり、明確に上昇や下落の限界値があるわけではない。過去には14倍台で推移したこともある。とはいえ、アベノミクスがスタートし、株式相場が堅調となる中でも終値ベースで13倍にタッチしたことがないことは示唆に富んでいる。13倍に近づくと日経平均株価に過熱感が出ているサインと見なされ、先物や値がさ株3銘柄に利益確定の売りが出やすいからだ。一方でNT倍率が上昇すると、メガバンクや地方銀行といった金融株に出遅れ感が広がることも度々見られる。金融株にまとまった買いが入ると、TOPIXの上昇率は日経平均株価を上回り、NT倍率は下落する。

こうしたNT倍率の傾向は、日本株のETF運用を考えるうえでも参考になるだろう。(ZUU online 編集部)