日銀が導入したマイナス金利付き量的質的金融緩和の評価は、企業が金融機関の貸出態度が緩和したとみるのか、引き締まってしまったとみるのかで決まる。

景気刺激効果が確認されるかは、内需の動向を最も敏感に反映すると重要視している日銀短観中小企業金融機関貸出態度DIに表れることになろう。

このDIは、失業率に半年から1年きれいに先行する指標(DIが上昇すると失業率が低下)となっている。よって、賃金インフレが物価上昇を加速するという形で、日銀の物価目標への動きが順調であるかどうかも判断できることになる。

上昇すれば日銀の勝ち、低下すれば日銀の負けとなる。しかし、日銀短観は四半期調査であり次回の結果は4月1日まで待たなければならない。

注目すべき指標「中小企業景況調査」

一方、日本政策金融公庫が月次の中小企業景況調査を公表し、その中に貸出態度DIも存在する。

日銀短観と比較しサンプル数がかなり小さいので結果の振れは大きいが、短観との相関関係は確認でき、速報性もあり注目すべき指標である。

政策金融公庫のDIは12月の46.1から、1、2月の49.4、48.9へ、上昇トレンドが続いていることが確認された。

過去の金融緩和局面で、企業は金融機関がより積極的に貸出に応じると考えるアナウンスメント効果があり、短観のDIがほとんど上昇してきたように、今回のマイナス金利でも上昇する可能性は高いと考える。

しかし、DIの上昇を加速させ、失業率の更なる低下につなげるためには、金融緩和の限界や副作用もマーケットなどで意識されていることを考えると、財政による景気対策によって企業のビジネス環境の改善を促進し、企業が楽観的な見通しが持てるようにする必要があろう。

このDIは、金融機関の客観的な融資条件の変化ではなく、企業が主観的に貸出態度をどう見るのかを計るもので、その主観的な判断にはビジネス環境の改善が重要だからだ。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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