行政書士,営業
(写真=PIXTA)

国家資格である行政書士は「人気の資格ランキング」でも常に上位にいる。サラリーマンの中にも、「行政書士の資格を取って、ゆくゆくは独立したい」と思っている人は少なくない。

しかし、行政書士は司法書士や税理士などほかの士業に比べて廃業率が高いと言われ、開業に二の足を踏む人も多い。開業7年目の筆者に「行政書士として成功している人に共通している」と思う点を7つ挙げてもらった。

共通点1 聞き上手である

行政書士の仕事は基本的に相談者から依頼を受け、申請書や契約書などを作成することである。しかし大前提として、依頼者から相談内容を詳細に聞かなければ書類自体の作成ができないため、人を相手にする仕事でもある。

こう聞くと行政書士に向くのは「話上手な人」と思われがちだが、むしろその逆だ。「聞き上手な人」のほうが向いている。自分からあれこれ話す必要はなく、相手から依頼の柱となる事柄を上手に聞き出す技術が必要である。相手が言ってきたことをうまくまとめて、「○○と言うことですね」という調子で相槌を打ちながら、話しやすい雰囲気を作れる技術である。

また依頼者によっては、自分に不利なことは一切話さない場合があるが、そこをうまく聞き出すテクニックも必要だ。相手にとって都合が良いことだけを聞いて、申請書や契約書を作った場合、思わぬトラブルに発展していくことがあるからだ。

共通点2 口が堅い

一般社会でも同じだが、特に行政書士は口が堅くないと信用されない。行政書士にも「守秘義務」があり、業務で知りえた情報を他言してはならないと規定されている。相手と打ち解けたいと、つい業務での成功談等を話したいところだが、聞いている側は好感を持つどころか、「自分に話しているぐらいだから、他の人にも自分の情報を話しているのではないか」と疑心暗鬼になってしまう可能性がある。

特に個人が特定できる話や誹謗中傷に近いような話題は厳禁である。依頼者と親しくなり、あれこれ聞かれたとしても、少しでも守秘義務に関わることには「業務上お教えできません」と毅然とした態度をとったほうがいい。

共通点3 他士業に人脈がある

依頼される案件には、行政書士だけで仕事が完了できないものが多い。例えば、株式会社を設立したいという依頼の場合、定款の作成、公証役場での定款認証は、行政書士の業務範囲である。だがその後法務局で「会社設立登記」を行うのは司法書士の業務である。登記を行政書士が行った場合、司法書士法違反で懲戒の対象となる。知り合いに司法書士がいれば、依頼者に負担をかけずに業務を完了できる。行政書士数人でグループを作っているケースもあるが、あまり意味がない。

共通点4 マメである

行政書士は人を相手にする仕事である。依頼者との約束は絶対であることはもちろん、依頼者へこまめに連絡を入れることも重要である。例えば、依頼者と会う約束の時間に10分遅れそうだとした場合、ここで遅れる旨の電話がすぐ出来る人は成功できる。

一方、「10分くらいならいいか」と思って連絡を入れない人は、それだけで信頼を失う。また、業務を依頼された場合でも、できれば4〜5日に1回程度進捗状況を説明する気遣いも必要だ。

行政書士が作成する申請書や契約書は、一字一句に意味があり、ちょっとした誤字脱字があっても、許されない。そういう意味で、行政書士自身も厳格さを備えていないと依頼者に信頼されない。ちょっとでも「いい加減さ」を依頼者が感じたら、それだけで命取りになる。

共通点5 ポジティブである

行政書士の仕事は集客がすべてである。いくら業務の知識があっても、肝心の依頼者がいなければ仕事にならない。そこで様々な方法で集客をすることになるが、効果的な方法は自分で探すしかない。

Webサイトでの情報発信、新聞の折り込みチラシ、異業種交流会への参加、FaxでのDMなどいろいろな手法が考えられるが、残念ながら「この方法なら必ず受注できる」というものはない。行政書士はみんな、試行錯誤しながら営業活動を行っている。

一つの方法がうまくいなかったからといって、いちいち落ち込んでいたらきりがない。失敗した原因を冷静に分析し、次の方法を考えるポジティブさが必要だ。

共通点6 行政書士の分野にこだわらない

行政書士の仕事は行政書士法で規定されている。しかしそれだけに縛られていると、新しい発想ができない。時代の変遷に伴い、新しい産業ができたり、新たな規制ができたりすると、今までなかった行政書士の仕事が発生することになる。

日本は外国に比べて規制の多い国だと言われるが、その時の景気や政府の方針によって、「規制強化」と「規制緩和」の間を往復していることが分かる。新たな産業ができたり規制ができたりすることは、行政庁の許認可が必要になってくることを意味し、行政書士の出番でもある。常にアンテナを張り巡らせて、既存の行政書士の業務分野にこだわらない人は成功する。

共通点7 報酬額以上の仕事をする

行政書士の報酬額は特に決まりがない。各行政書士会や日本行政書士会連合会が報酬額について調査を行い、集計結果を公表している。行政書士のWebサイトを見ると、おおかたの相場が分かる。依頼者もそのことを知っているので、行政書士が提示した報酬額を値切られることもあるが、ここで仕事が欲しいがために簡単に値切ってしまう人は、成功が厳しいと考えていい。

行政書士の仕事には「仕入れ」というものもなく、ある程度値引きしてもやっていける。しかし一旦値段を下げたら、その額が次回の水準になり、さらに値引きを要求される結果になってしまう。

値引きをさせないためには、他の行政書士以上の付加価値のある仕事をすることである。例えば、申請書提出後の補正命令に関して依頼者の代理人として引き続き担当したり、契約書を取り交わす場所にアドバイザーとして同席したりと、他の行政書士がやっていないサービスをする。そうすれば当初の報酬額でも納得してもらえる場合が多い。もっとも値引きの要求がなくても、常に報酬額以上の仕事をする姿勢は大事である。

行政書士は法律の専門職だが、実態はサービス業である。クライアントあっての行政書士である。そのことを常に念頭に置いて仕事をしている人は成功している。今回、成功している人の共通点を7つ挙げたが、結局は人の役に立ち、この仕事で食べていこうという覚悟がある人が成功をしている。(ZUU online 編集部)