経済指標には様々な種類があるが、どのように読み解いていけばいいのか、どう使っていくべきか分からない人も多いのではないだろうか。特に、混同されやすい平均値と中央値の違いや、それらの注意点を述べながら、経済指標とはどういったものか、どのようなときに使うべきかを解説していきたい。
平均値と中央値の違い
経済指標とは、経済状況を数値化した指標や統計のことだ。主に政府の各省庁や中央銀行が発表する。経済指標を分析することによって、各国や業界の経済動向を知ることができる。特に重要な経済指標が発表される場合、その結果次第で金融市場が大きく反応することもある。従って、資産運用に経済指標を活用する際には、経済指標を正しく読み解く力が必要になる。
経済指標を判断する際に、目安となる数字のひとつに「平均値」がある。しかし、ときには「中央値」も確認する必要があるかもしれない。平均値や中央値とはどのようなものだろうか。
平均値とは、統計の平均となるものである。個数の合計を個数で割った数値をいう。一方、中央値とは、母集団の分布の中央にくる値をいい、メディアンともよばれる。母集団の分布が奇数の場合は真ん中の数値が中央値になり、偶数の場合は真ん中の数値2つの平均を中央値という。
それぞれどのようなときに使うべきか
それでは、平均値と中央値をそれぞれどのようなときに使うべきだろうか。結論から言えば、対象指標の上限が理論上、青天井の場合は、平均値に加えて中央値を確認した方が、より現実的な視点を持てる。
例えば身長や体重、年齢のように、ある大体の範囲内で収まる指標の場合は、平均値のみで判断しても実態から大きく乖離する可能性は相対的に低い。その一方、年収や貯蓄額などは理論上上限がないため、一部の人が大きく平均値を引き上げてしまう可能性がある。その場合は、平均値だけではなく中央値も確認する必要がある。
後者の具体例を考えてみよう。年収に関する統計として、400万円、500万円、500万円、1億円の4人がいたとすると、中央値は500万円にも関わらず、平均年収は2,850万円となる。1人の高額所得者が平均を大きく引き上げているため、他の3人の年収よりもずっと大きな数字が平均値として現れてしまう。対して、1億円の人が抜けて3人で統計を取ったとしても、中央値は500万円のままだ。中央値は1人が与える影響を抑えた数字といえるだろう。
これは極端な例だが、同じような現象は現実に起こっている。実際の例として、厚生労働省が発表している「平成27年度国民生活基礎調査」を見てみよう。これによると、2014年の1世帯当たり平均所得金額は 541万9,000円となっている。その一方、中央値は 427万円であり、平均所得金額 (541万 9,000円) 以下の世帯割合は 61.2%となっている。つまり、6割以上の世帯が平均値以下の所得であり、一部の高所得者が平均値を引き上げ、平均値と中央値とに乖離が生じている例といえるだろう。
また、年収や貯蓄額に関する統計の場合、この平均値と中央値が乖離する現象は、新興国や発展途上国でより起こりやすい。そのような地域では、日本よりもさらに貧富の格差が大きいケースが多いからだ。新興国や発展途上国のデータを扱うときは、より一層注意を払いたい。
平均値に惑わされない
経済指標を正確に読み解くことができれば、資産運用や実生活の大きな助けになるだろう。もちろん経済指標は、平均値や中央値ではなく、過去のある時点との比較 (前月比、前期比など) が重要な場合もある。
どちらにせよ、経済指標を誤って読み解くと、経済動向の方向性を見間違う可能性がある。少なくとも「対象指標の上限が理論上、青天井の場合は平均値だけではなく中央値も確認する」と覚えておきたい。(提供: 大和ネクスト銀行 )
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