2020年、コロナウイルスの感染拡大により金融市場に動揺が広がり、株式相場は急激な下落に見舞われた。突然のショックに狼狽した投資家も少なくなかったであろう。
コロナ禍以前にさかのぼると、リーマンショックなど相場の大幅な下落は付き物である。とはいえ、投資家は保有する資産が目減りすると心中穏やかにはいられない。相場の下落に対し備えておくことが理想だが、その手段にはどのような方法があるだろうか。
下落相場に備えた分散投資
投資の世界には「卵は一つの籠に盛るな」という格言が存在する。
卵を一つの籠に盛ると、その籠を落としたときに卵が全部だめになるリスクが高まる。しかし卵を複数の籠に盛っていれば、一つの籠で卵が割れても、残りの籠の卵は割れずに済む。つまり、特定の銘柄や資産に集中して投資するのではなく、複数の商品に分散して投資することでリスクを分散させたほうがよい、ということだ。
資産運用では、株式だけでなく債券や商品、さらには国内のみならず海外も投資対象にしてポートフォリオを組むことで分散投資となる。その上で、それぞれの金融商品の相関性を意識することが重要だ。
例えば、国内の株式と債券は逆の動きをする傾向があり、株式が値上がりすれば債券は値下がり、その逆も然りである。つまり株式と債券をポートフォリオに組み込んでおけば、片方の金融資産の損失をもう片方が補完し、相場の下落局面でもリスクを抑制できる効果がある。
下落相場に備え「有事の金」
分散投資で資産のポートフォリオを組む際に、リスクヘッジとして金も選択肢に挙がる。「有事の金」とも言われるように、危機が生じた際にはリスクを回避するため、資金が流入する傾向がある。実際に、コロナウイルスの感染拡大が世界的に広がった2020年3月以降、金価格は3割以上も上昇し、8月には1オンス=2000ドル (約21万円) と、初めて2000ドルの大台を突破した経緯がある。
現物資産でもある金は、利息や配当収入を得られるというわけではないが、企業の倒産によっては紙切れ同然ともなる株式とは異なり、価値がゼロになることはない。資産価値が無くならないという点においてもリスクヘッジとなりうるだろう。
金投資は現物の積立購入のほか、金融市場においても投資信託やETF (上場投資信託) を通じて投資することも可能であり、手軽にポートフォリオに組み込むことができる。
インバース型投信でリスクヘッジ
信用売りの場合には、予想に反してその後の株価が上昇すると損失が発生することにもなり、リスクヘッジの手法として活用するのにハードルが高いと感じる投資家も多いだろう。そのような投資家に強い味方となるのが、インバース型投信である。
日経平均株価などの指数に連動するインデックスタイプの投資信託では、株価が上昇すればインデックス投信の基準価格も上昇するが、株価が下落すると同様の動きとなる。インバース型の場合は、英語で「反対」を意味する「Inverse」の文字通り、指数の動きに対しマイナスになるように設定されている。つまり、株価指数が上昇するとインバース型投信の基準価格が下落する代わりに、指数が下落するとインバース投信の基準価格が上昇する仕組みだ。
さらに、インバース投信によってはマイナス2倍といったレバレッジを効かせたタイプのものもあり、相場が大幅に下落した際に、より大きな利益を確保することも可能である。
インバース型投信をポートフォリオに組み込めば、相場下落局面において保有する株式などで発生した損失をカバーする役目を果たしてくれる。ただし、相場上昇局面では損失が発生してしまうため、リスク管理を目的とするならば、ポートフォリオの一部としてインバース型投信を組み込むと良いだろう。
相場下落を想定した投資戦略が鍵
相場の上昇局面では、目先の利益を追い求め、下落相場を意識したリスクヘッジは後回しになる傾向がある。しかし、今回のコロナショックで多くの投資家が教訓を得たように、資産運用においては常に相場の下落を想定した投資戦略が鍵となる。
相場の先行きに暗雲が立ち込める前に、まずは、分散投資のポートフォリオを組み、その際には金への資産配分も考慮したり、あるいはインバース型投信を活用したりして備える必要がある。こうした戦略により、金融相場のショックにも動揺せずに資産運用を進めていくことが可能となるだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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