金融・経済に関するニュースで見聞きする「デジタル赤字」というワード。デジタル赤字は、円安が加速する要因になるというが、なぜなのだろうか。本記事では、デジタル赤字についての基礎知識を解説し、円安のさらなる進行に備えるための資産運用法も紹介する。
デジタル赤字とは
日本における「デジタル赤字」とは、日本人や日本企業が海外企業のデジタルサービスを多く利用することで、国際収支におけるデジタル関連収支が赤字になる状況を指す。
日本人や日本企業が海外のデジタルサービスを利用する際は日本円で決済が行われ、その後海外企業は最終的に日本円を米ドルなどの外貨に変える。「日本円を米ドルに変える」ということは、「円売り・ドル買い」が起きるということだ。
詳しくは後述するが、円売り・ドル買いは円安 (ドル高) を誘発する。つまり、デジタル赤字が大きくなればなるほど、円安の進行が加速しやすくなるというわけだ。
デジタル赤字の現状
2023年8月に公表された日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」では、デジタル関連収支の変化が紹介されている。
例えば、2014年時点では0だったデジタル関連収支主要項目 (※1) の受取額は、2022年にはいずれの項目も約5,000億~1兆円まで増えている。しかし、同年の支払額も全項目1~2兆円程度まで増えており、すべて受取額より支払額のほうが大きい。
(※1) 「著作権等使用料」「コンピュータサービス」「専門・経営コンサルティングサービス」
ちなみに日本経済新聞社の独自集計によれば、2022年のデジタル赤字は約4兆7,000億円に上り、5年前と比べると1.9倍になったという。
日本のデジタル赤字が膨らんだ原因
日本のデジタル赤字が膨らんだ原因として、国内における海外のデジタルサービスの利用がより一層活発になったことが挙げられる。
先に紹介した日銀レビューによると、特に米国への支払増加幅が大きく、その背景として日本企業が米国企業の提供するデジタル技術を活用して生産性の向上などに取り組んできたこと、また新型コロナウイルス感染症の拡大により、米国のプラットフォーマーが提供するクラウドサービスの利用が国内で普及したことなどが伝えられている。
米国の巨大IT企業群GAFAM (※2) が現在も大きな存在感を示し続けていることを考えると、日本のデジタル赤字は今後も加速する可能性は高いだろう。
(※2) 「Google」「Amazon」「Facebook (現:Meta Platforms) 」「Apple」「Microsoft」を指す
デジタル赤字だと円安の進行が加速する理由
冒頭でも触れたが、デジタル赤字が大きくなればなるほど、円安の進行は加速しやすくなる。その理由を為替相場が変動する仕組みとともに解説する。
為替相場が変動する仕組み
例えば円を売ってドルを買う動きが加速すると、円の価値が下がっていき円安 (ドル高) が進む。逆に、ドルを売って円を買う動きが加速すると円の価値が上がっていき円高 (ドル安) が進む。為替相場が変動する仕組みとして、まずこの基本を押さえておこう。
国際収支が為替相場に与える影響
国際収支が赤字の状態になると、基本的にドルを売って円を買う動き (=円高要因) よりも円を売ってドルを買う動き (=円安要因) が強くなる。つまり、為替相場において円安の進行がさらに加速するということだ。
デジタル関連収支は国際収支における一部でしかないものの、国際収支を悪化させる一つの要因にもなり得る。今後もデジタル関連収支の赤字が膨らめば当然、国際収支への影響も大きくなるだろう。
円安のさらなる進行に備えるなら外貨預金
デジタル赤字による円安のさらなる進行に備えるなら、日本円を米ドルやユーロ、豪ドルなどの外貨に換えて預金する「外貨預金」が有効だ。その理由を2つ解説する。
円安リスクのヘッジになる
ここでは、日本円を米ドルに換えて外貨預金を行っているケースで考えてみよう。
例えば「1ドル=100円」が「1ドル=110円」になり円安に傾くと、1万ドルの価値は100万円から110万円に上がる。保有している日本円の価値はドルに換算すると下落してしまうが、同時に保有しているドルの価値は日本円に換算すると上昇する。
つまり、円安が招く自己資産へのマイナスの影響を小さく抑えることが可能だ。
日本円よりも多くの金利収入を得られる
外貨預金は、日本円で預金しておくよりも多くの金利収入を得られることも魅力だ。例えば、大和ネクスト銀行で米ドルや豪ドル、トルコリラの外貨預金を行った場合の金利は以下のようになっている。
- 米ドル 年0.50%
- 豪ドル 年0.50%
- トルコリラ 年3.00%
※2024年4月3日時点の個人のお客さまの場合 (変動金利)
金利収入により資産が増えれば、円安による日本円の価値の目減りをいくらか相殺することもできるだろう。
外貨預金には3つの選択肢がある
財産を主に日本円で保有している場合は、デジタル赤字によるさらなる円安の進行に早めに備えておきたいところだ。その際に有力な選択肢となるのが外貨預金だが、外貨預金には「普通預金」のほかにも「定期預金」があり、「積立」という預入方法もある。
定期預金は普通預金より金利が高く設定され、積立は外貨の保有タイミングを分散することで為替差損のリスクを減らせるため、円安対策として外貨預金を検討する際は、こうしたメリットも考慮したうえで、自身に最適な方法を選択するようにしたい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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