公認会計士&税理士にして、ベストセラー新書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で知られる人気作家の山田真哉さん。山田さんは有価証券投資にも取り組まれています。大きな損をしたこともあることで知られる山田さんご自身の投資体験について赤裸々に語っていただきました。

投資は社会人デビュー 大学卒業後、すぐに投資信託を始める

山田 真哉さん

――投資を始めたのは、いつからだったのでしょうか。

山田:最初に投資を始めたのは、社会人になりたての頃。東京の予備校に就職したタイミングですね。“社会人足るもの、やっぱり投資だよね”と思って、証券会社に行って口座を作り、50万円の投資信託でデビューを果たしました。なんか、学生のときから、“大人になったら、みんな日経新聞読んで、投資をしているんだろう”っていうイメージを勝手に抱いていたのですね。

その資金は、学生の時にアルバイトで貯めたものです。予備校の講師として、月20万円は稼いでいましたから、就職した段階で200万円くらいの預貯金はありましたので、そこから50万円だけ投資に回したのです。

最初に購入した投資信託は、その後、減ったり、戻ったりといった感じで推移していったのですが、例の「女子大生会計士の事件簿」を自費出版したときに解約しました。要するに、それだけ貯金があったから、出版ができたということですよね。

真剣に投資に取り組むようになったのは「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」が売れてからのこと。印税が入って貯金が見る見るうちに増えていったので、“なんかやったほうがいいよね”と考えたのですね。そんな折、知り合いのビジネス書の作家さんから、FXでものすごく儲かっているという話を聞いて、やってみようかなと考えました。

同時に株式投資もスタート 基本路線は長期投資

同時に、株式投資も始めていました。監査法人に勤務していた時代は、株価には注目していましたが、インサイダーになるので、購入はできませんでしたから、フリーになった時点で購入。ちょうど2006年頃、日経平均株価1万6,000円の時代にまとめて買って、2007年からのサブプライム問題、続けてリーマン・ショックでワーッと落ちて、以降、悲惨な状態が続いていました。最近ようやく戻ってきたというところですね。

たまに売り買いはしますが、基本は長期投資。原則、売らないと決めています。当初はナンピン買いもやったりしましたが、時間を費やす割に儲からないというか、見合わないとわかってやめました。

結局、株の取引で一番難しいのは、売るタイミングの判断ですよね。売らなければ考える必要もないので。基本的には買い足すだけ。だから株主優待や配当利回りが良いところだけ買って、保持しているという状態です。あとはつぶれない会社に投資する。ですから、決算書をじっくり読むのも四季報レベルでOKですよね。

FXで5,500万円の損。多額の勉強代に

山田 真哉さん

山田さんは続けます。

FXはかなり激しい動きがありました。もう2006年から2007年にかけての時期は、FXをやっていたという記憶しかないくらい(笑)。最初は100万円からはじめて、それが700万円になった。これはいいと買い足していって、実際に突っ込んだのは1,800万円ほど。スワップポイント(金利)で、毎日利息を受け取っていたのですが、当時、1日5万円が入る生活を送っていました。

それはもう、働く気などなくしますよね。たまに本を書いてTVや講演会に出てと、自分の好きな仕事だけを選んで受けるような日々。このまま運良くいけば、死ぬまで1日5万円が入ってくる生活が送れるのではないかと、そんな錯覚さえ覚えていました。

でも、そんな夢のような暮らしにはやがて終わりが訪れます。サブプライム問題から世界同時株安が発生し、一気に円高に振れ、5万円あったスワップポイントが1万円に、やがてスワップポイントがあったりなかったり、そして、2008年11月には、5,500万円あった残高が、最終的には8,211円になりましたから、本当に恐ろしい終焉を迎えることになりました。

うまく行っているときはそれにとらわれる。教訓は忘れない

――凄まじいご経験ですね。そこから得た教訓はどのようなものだったのでしょう?

山田:ちゃんと働いた方がいいと思いました(笑)。結局、労働収入って安定しているなと。給料は30万円からいきなり3万円にはなりませんからね。それで2009年に会計事務所を作ろうと考えました。

これまでずっと一人でやってきましたが、まずは事務所を作って人を雇って、私も税理士の資格を取得。現在の「一般財団法人芸能文化会計財団」の原型をスタートさせました。2010年から、毎年少しずつ人を入れていって、今では12人の所帯となりました。

まあ、借金をしたわけではないので、それは本当に良かったです。FXはレバレッジ100倍でやっていたので、55億円動かしていたんですよね。当時は、かなり落ち込みましたし、奥さんとの間では、今でも資産が「5,500万円だったときに換金しておけば、家が買えたのにね」という話になります。

最終的には、そんなにおいしい話はないという教訓を得たのですが、人って不思議なもので、うまくいっていると、そこにとらわれてしまうのですね。今となっては、長期の株式投資とFXの両建てでやっていたことで救われました。(提供:お金のキャンパス

山田 真哉(やまだ しんや)
公認会計士・税理士
一般財団法人 芸能文化会計財団 理事長

神戸市生まれ。公認会計士・税理士。大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)を経て、芸能文化会計財団の理事長に就任。
主な著書に、160万部のミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)。
現在は『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』(文化放送)・『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)等にレギュラー出演し、約60社の顧問、内閣府の委員等を務めている。


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