2018年6月に始まった日本版規制のサンドボックス制度は海外の事例とは異なり、幅広い範囲で活用することができます。イノベーションを起こしたい、新しいことにチャレンジしたい人たちには起爆剤となり得る制度かもしれません。また、この実証実験に私たちユーザーが実際に使用してみることによって、新たな可能性が生まれるかもしれません。このような未来を感じさせる制度を実際に運営される内閣官房日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏に、この制度に対する思いや希望をお聞きしました。
情熱を持つ人たちと一緒に日本を良い方向に変えていきたい
−−特にAI、IoT、FinTech、ブロックチェーンなど、革新技術の発展に大きく寄与しそうなレギュラトリー・サンドボックスですから、次世代を担う若い方々の力に期待したいところですね。
中原氏:新しい社会実装ということで考えたときに、これまでの考え方と非連続なアイデアというものは、場合によっては経験のないところにこそあるのかもしれないという気がしています。
今までは着実に物事を積み上げてきていて、確かにそれ自体は重要なことで、先輩方から学ばなくてはいけないところはたくさんあるということは重々理解したうえで、もしかしたら、そうやって積み上げられてきたなかにも、「あれ?そもそもこの前提に立つ必要があるのか」いう部分もあるかと思うのです。
これまでとは違った考え方で、そういった疑問点や改良点を丁寧に解きほぐしたうえで、そこからまた新しいものを積み上げていくということは非常に有効かと思いますし、私たちはもとより、若い世代の人たちの役割かもしれません。そういった意味でも、ぜひ若い世代の方にお考えいただいたことを問題提起をしていただければと思いますし、そういったパッションの口火を切っていける機会と捉えていただければと思います。
−−あらゆる物事を根底から変えていくためにはパッションが必要ですね。
中原氏:そうです。こんなふうに世の中を変えていきたいという想いは、皆様のなかには必ずあって、特にそういった想いを持つ事業者の情熱に我々も応えられるようになりたいし、そういった柔軟性を持つことで国際競争に打ち勝っていける、そういう強い政府でありたいと思っています。最初からあまり大きなことを言うべきではないかもしれませんが、私たちもそういった志を持っていることは確かですし、皆様のご要望に真摯にお応えできるようにしたいと思っています。
人生100年時代 規制のサンドボックス制度は世代を超えた起爆剤に
−−「人生100年時代」と言われています。若い人はもちろんですが、ベテラン世代もまだまだ頑張っていかなければならない時代です。そういった意味でも、今回のレギュラトリー・サンドボックスは第二の人生を築いていくために活用できる制度ではないでしょうか?
中原氏:おっしゃる通り、まさに50代、60代の方々もまだまだお元気でご活躍いただけるものと思います。皆様が若いときに非常に面白いアイデアを考えたけれども、ご自身が勤められていた会社の状況や、その時代背景や経済環境など外部要因によって実現しなかった、そんなアイデアをお持ちだったという方々もたくさんいらっしゃるでしょう。
そういった方々がかつて帰属した組織のしがらみ故に実現できなかったアイデアを第二の人生において実現されようと考えて、このサンドボックス制度を活用するのも良いかもしれません。なにもICT(情報・通信技術)や最先端技術分野のなかにだけ、革新的なアイデアが眠っているわけではありません。ベテランの皆様の知見が活かせる場も大いにあると思っています。
デジタルネイティブ世代の皆様が考えるワクワクするアイデアに私達も併走したい
−−最後にお金のキャンパスの読者、あるいは企業やベンチャーにお勤めの皆様に向けて、この「レギュラトリー・サンドボックス制度」の趣旨に鑑み、メッセージをお願いします。
ハードルが高いなどとは思わず、特に若い世代の方々にお越しいただくことを歓迎しています。やはり、スマートフォンを自在に使いこなすデジタルネイティブの方々は、物心ついたときから新しい商品、新しいサービスを受け入れ、そして新しいルールの必要性を体感していることと思います。そういった世代の方々が持つ感覚のなかから新しいものが生み出せられることも確信しています。
既存の概念からでは到底思いつかないような、若い世代だからこそ考えつくような新しいアイデアを持ち込んでいただくことに期待していますし、私たちもそういった出会いにワクワクしているところであります。そういう意味ではぜひ、気軽に門を叩いていただければと思います。皆様が主体となって新しい技術のパラダイムを作っていく、その「後押し」をしっかりさせていただきたいと思います。
例え素晴らしいアイデアがあっても、これまでは法規制の面で難しい、実現するためのリソースが不足しているから後回しにしてきたというベンチャーさんも非常に多くあると聞いています。そういった皆様にお伝えしたいのは、決してあきらめないでいただきたいということです。
また、過去にあきらめてしまって、棚上げしていたアイデアのなかに宝の山が眠っているかもしれませんから、再び掘り起こしてみるのも良いのではと思っています。
どうしてそのときに頓挫してしまったのかも含めて私たちと一緒に課題を解きほぐしてみて、実証を行うことでまた一歩前に進めることができるのであれば、ぜひトライをしていただきたいです。そこからまた、新たな制度改正につながってくるかもしれませんから、私たちも全力を尽くしたいと思います。
中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官
1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。
(提供:お金のキャンパス)
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