人生の終わりに向けた活動(備え)を終活といいます。終活という言葉が使われ始めたのは2009年頃で、当時は「遺された家族に負担をかけないための準備」という意味合いが強いものでした。しかしながら、近年では「残りの人生を充実させるための活動」として認知されてきており、一般社団法人終活カウンセラー協会でも終活を「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動」と定義しています。
今回は、終活ではどのようなことをすればよいのか紹介していきます。
目次
終活でなにをすればいいの?
終活では「自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動」という観点から、主に以下のようなことをするのが一般的となっています。
【終活で行う一般的な事柄】
① 身辺の整理(持ち物や交友関係)
② 財産の整理、相続に向けた準備
③ 医療・介護についての希望や意思の表示
④ 葬儀についての希望や意思の表示
⑤ 今後やりたいことのリストアップ
終活で整理したことや希望・意思表示は「エンディングノート(終活ノート)」にまとめると便利です。エンディングノートに法的拘束力はなく、記入方法にも決まりはありません。手書きやパソコンで自由に作成することもできますし、書店やウェブサイトで購入したエンディングノートを利用することもできます。
身辺の整理(持ち物、デジタルデータ、交友関係)
自身の死後、遺された家族の負担になりやすいことの一つが「遺品の整理」です。遺品が多いほど整理にかかる時間や費用がかかってしまうので、長期間利用していないものを中心に整理や処分を進めていくことが大切です。なかには思い出の品やコレクションなど、大切なものや処分に踏み切れないものもありますが、そのようなものについては亡くなった後の取り扱いや希望をエンディングノートに記しておくのが良いでしょう。
また、持ち物だけでなく、デジタルデータの整理も忘れてはいけません。パソコン・スマートフォン・インターネットに保存している写真や動画、電子メール、利用している会員制サイトやSNSのアカウント情報などが該当しますが、デジタルデータには他人に見られたくないものも多く含まれます。不要なデータはできる限り削除し、残したデータの取り扱いはエンディングノートに記載しておきましょう。
そのほか、自身になにかあったときや最期のときに連絡してほしい人のリストアップなど、交友関係の整理も大切です。交友関係の整理というとドライな感じに聞こえますが、遺された家族の負担を軽減するため、年賀状だけの付き合いになっている友人に「年賀状じまい」を伝えたりすることも終活の一部といえます。
財産の整理、相続に向けた準備
遺された家族が相続手続きなどをスムーズに進めるためにも、終活で「お金」に関する整理をすることはとても重要です。自身が保有している財産の種類や金額などをリストアップすることで、家族の負担を軽減できるほか、今後の資金計画やライフプランを再考することもできます。
リストアップするのは、預貯金、不動産、有価証券(株式・債券・投資信託・生命保険など)が中心になりますが、ローンなどの負債も記載しておく必要があります。
【財産の整理でリストアップする主なもの】
・利用している金融機関(銀行・証券会社・信託銀行・保険会社など)
・預貯金の額
・保有有価証券(株式・債券・投資信託・生命保険など)の額
・不動産(自宅・賃貸で収益を得ている物件・農地・山林など)
・資産価値のある芸術品(絵画等)や骨とう品など
・ローンなどの負債
また、相続時は金額の多寡にかかわらずトラブルが起こりがちです。トラブルを防ぎやすくするために遺言書を作成することも終活の一環です。遺言書の作成は民法で定められた法律行為(法的拘束力を持つ)で、主な種類として、自身で作成することができる自筆証書遺言、公証人による作成が必要な公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は、自身のみで作成できるメリットがある一方、様式や記入方法が厳密に定められており不備があった場合は無効になってしまうこと、偽造や紛失のおそれがあることなどのデメリットがあります。公正証書遺言は、作成にコストはかかるものの、公証人が作成にかかわるため不備による無効の可能性が低いこと、公証役場で保管するため偽造や紛失の可能性が低いこと(渡された正本を紛失しても再発行できる)などのメリットがあります。
医療・介護についての希望や意思の表示
人は高齢になるにつれ、医療や介護の必要性が高まります。今は元気でも、重病に罹ってしまった場合、認知症になってしまった場合などは、自身で判断することが難しくなる場面もあるため、医療や介護に関する情報共有や意思表示をしておくことが大切です。
医療・介護に関する情報の共有 | 医療に関する希望や意思 | 介護に関する希望や意思 |
---|---|---|
・ 罹りつけ医療機関 ・ 服用している薬 ・ 健康保険証やお薬手帳など の保管場所 ・ 自身が利用できる介護制度 |
・ 病名や余命の告知 ・ 延命治療や終末期医療の方針 ・ 臓器提供の意思 ・ 最期のときをどこで誰と迎え たいか |
・ 老後のすまい ・ 老人ホームや介護施設への 入所意思 ・ 介護の方針 |
葬儀についての希望や意思の表示
葬儀は自分で行うことができないため(生前葬を除く)、希望がある場合は家族に伝えておく必要があります。具体的には、葬儀の種類(家族葬など)や規模・費用、葬儀に必ず呼んでほしい人、喪主をお願いしたい人、遺影として使ってほしい写真などをエンディングノートに明記するのがよいと思います。
葬儀費用、葬儀社探しや契約手続きなど、家族の負担を軽減する方法としては「葬儀の生前契約」をしたり、「生前葬」を行ったりすることなどが挙げられます。
「葬儀の生前契約」は、葬儀費用と別に年会費のような費用がかかることもありますので、契約する場合は解約や変更ができるかどうかも含めて事前に確認する必要があります。また、生前契約したことを家族が知らない場合は別に葬儀を執り行ってしまうケースもありますので、生前契約していることは必ず家族に伝えるようにしてください。
「生前葬」は、自身が生きているうちに執り行う形式の葬儀です。形式にとらわれず、自身が取り仕切ることができるため希望通りの葬儀ができること、参列(出席)した方に直接気持ちを伝えられることなどがメリットとして挙げられます。
葬儀関連の情報サイト「いい葬儀」が行った「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、葬儀にかかった費用の平均は110.7万円となっています。ただし、2022年調査の対象期間である2020年3月~2022年3月は、新型コロナの影響で費用の安価な家族葬が増えた影響を受けているため、家族葬より規模の大きな一般葬を行う場合は金額が増えることになります。
【ご参考】葬儀の平均価格の推移
また、お墓(納骨先)がない場合はお墓も必要になります。寺院の墓地や霊園にお墓を建てて家族や近親者が供養する一般墓のほか、寺院や霊園の管理者が永代にわたって供養してくれる永代供養墓、海や山に散骨する「自然葬」など、納骨の形も多様化しています。かかる費用や家族の負担がそれぞれ異なりますので、希望があればお墓についてもエンディングノートに明記しておくようにしましょう。
葬儀関連の情報サイト「いい葬儀」が行った「第4回お葬式に関する全国調査(2020年)」によると、お墓の購入にかかった費用の平均は135万円、最も多い価格帯は100万円~150万円となっています。
今後やりたいことのリストアップ
自分らしく豊かな人生を送るために、今後何をしたいかリストアップして明確にするとライフプランも組みやすくなります。自分の趣味、若いときにできなかったことへの挑戦、今後の目標や夢、家族との時間の過ごし方(旅行など)、などを自由に考えてみましょう。自分のしたいことを前向きに考え実行することができれば、残りの人生をより充実させることができるのではないでしょうか。
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