韓国における勤労奨励税制の導入過程や概要
◆勤労奨励税制の導入過程や変化
韓国における勤労奨励税制は2003年に元盧武鉉大統領の政権引受委員会がEITCの導入を提示したことをきっかけに導入が推進され、2006年12月26日に勤労奨励税制関連法規(租税特例制限法第100条の2及び第100条の13)を制定してから、2008年1月1日から施行(給付の支給は2009年9月から)している(*8)(図表6)。
勤労奨励税制は、導入以降、数回にわたり改正案が発表され、適用対象を段階的に拡大している。例えば、2011年の改正案では世帯基準が変わり、扶養する子どもがいない世帯(有配偶者世帯)にも勤労奨励税制が適用されることになった。
また、2012年の改正案により2013年からは配偶者や扶養する子どもがいない60歳以上の高年齢者世帯も適用対象になった。さらに、2013年の改正案により2015年から勤労奨励金が引き上げられ、子ども奨励金が新設された。その主な内容は図表7を参照していただきたい。
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(*8)韓国におけるEITC制度の仕組みは基本的にアメリカの制度を参考としている。
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◆勤労奨励税制の目的
韓国における勤労奨励税制は、低い所得が原因で経済的自立が難しい労働者や事業者(専門職は除外、2015年度から支給)世帯に対して世帯員数や年間給与総額等から算定された勤労奨励金を支給することにより、働くインセンティブを高めるとともに実質所得を支援する制度である。勤労奨励金の年間最大給付額は施行初期の120万ウォンから現在は210万ウォンまで拡大された(*9)。
図表8は既存の国民基礎生活保障制度との違いを示している。国民基礎生活保障制度とは、日本の生活保護制度に当たる公的扶助制度で、2000年10月に従来の韓国における生活保護制度の問題点を改善する目的で導入された制度である(*10)。
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(*9)施行初期には、世帯の所得が最低生計費の120%以下の人で、国民基礎生活保障制度の受給から除外された階層、いわゆる「次上位階層」が主な対象者で、前年度の年間総所得が1,700万ウォン未満である労働者世帯に年間最大120万ウォンまでが支給された。
(*10)金明中(2004)「IMF体制以降の韓国の社会経済の変化と公的・私的社会支出の動向」-特集:IMF体制後の韓国の社会政策-『海外社会保障研究』No.146
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