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私の専門は保険なので、生命保険についての相談を受けることが多いです。その時に、生命保険の設計書などを見る機会があるのですが、よく驚かされます。なぜかというと、とんでもない設計書がほとんどだからです。
損をしているのに、満足している人とは?
たとえば、医療保険でいうと105歳払込満了の終身保障です。これって、終身保険の終身払いと同じですよね。 105歳で払込が終わっても意味があるのでしょうか。もちろん意味なんてありません。その保険の月額保険料が5545円で、48歳から105歳までの47年間支払うと312万円の保険料を払うことになります。どう考えても、契約者に不利な条件としか言いようがありません。
さらにその設計書を見ると、不要な特約が6つくらい乗っかっていて月額保険料が1万6464円、10年後には保険料が上がって2万6357円になります。詳しく話をうかがうと、数年前にも保険の見直しを行っていて、それまで予定利率が3.5%だった保険が、予定利率1.15%になっているのです。これは、 疑問の余地がなく損をしているとしか言いようがありません。それなのに契約者は、その時に保険を見直して保障が充実したと喜んでいるのです。
なぜこのような事が起こるのでしょうか。保険の不利な情報は伝えられてはいなくて、有利な点だけを説明されているからです。つまり、自分が損失を被っていることを自覚できていないのですね。
私たちは「情報の非対称」の社会を生きている
売り手の持っている情報と買い手の持っている情報に大きな差があるとどうなるでしょう。売り手は、専門知識と情報を持っています。かたや買い手は知識がありません。売り手は「欠点のある情報」を隠すこともできます。買い手は、それに気づきません。
これでは売り手の都合のいい条件を飲まざる得なくなります。すると、どうしても買い手の方が、不利になります。経済学では、これを「情報の非対称」と言います。
「情報の非対称」の事例として中古車販売の話があります。私もクルマを売却した時に、後悔した経験があります。クルマについての知識は、ほとんどなくクルマを中古車販売の業者にいわれるまま売ったのですが、この時、もう少し専門家の話を聞いて、情報を集めてから行動に移せば自分でも納得のいく交渉ができたのではと後悔をしています。まさに情報の非対称ですね。