両立支援のためには「在宅勤務制度」?

治療と仕事の両立支援制度については、企業の規模を問わず「在宅勤務制度」が「あった」とする回答の少なさが目立つ。従業員1000人以上の企業で11.8%、同1〜99人の企業で4.5%である。

がんに罹患した場合は、勤めている会社が整備している両立支援制度を詳細に確認しておきたい。そして職場の上司、同僚への円滑な相談と、術後の復職について意思疎通ができるようであれば何よりだ。

職場の対応は「特に何もなかった」が約半数

本調査結果では、がん罹患時に相談した相手は「所属長・上司」が最も多く、約8割に上る。これは当然なことと見てとれるが、その一方で、職場がとった対応は「特に何もなかった」が最も多いことに驚かされる。この回答は従業員1000人以上の企業で49.8%、同100〜99人の企業で54.3%、同1〜99人の企業で50.1%である。

職場の対応は「今後の働き方について、あなたの意思や希望を確認した」が従業員1000人以上の企業で36.5%、同100〜999人の企業で32.4%、1〜99人の企業で34.5%。「勤務先の両立支援制度の内容や制度利用中の処遇(評価、目標設定など)をあなたに説明した」は同1000人以上の企業で8.7%、同100〜999人の企業で5.8%、同1〜99人の企業で6.4%となる。

企業の規模とは無関係に、今後の働き方の意思確認や、両立支援制度の説明が行われた割合が少ないことから、現在はがん罹患者と職場の意思疎通が必ずしも十分ではないことが、本調査結果から伝わってくる。

がん罹患後の仕事に対する考え方では、「短い労働時間でも高い成果を出すように心がけている」「仕事で必要とされている」に約8割が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答。この項目では「がんのことで上司や同僚から気を遣われたくない」でも約7割が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答している。

本レポートによると、がん患者は増加しており、そのうち約3人に1人は就業可能な年齢で罹患する一方で、5年相対生存率は上昇している。がんは早期発見により「治る病気」になりつつある。働き方の多様化が進み、がん罹患者も安心して働くことができる企業が増えることが望まれる。(橋口義彦、Harry Hood Inc. 有限会社ハリーフッド)

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