Amazon,送料,有料化
(画像=Webサイトより)

Amazonが配送料金に関する規定を一部改定し、2000円未満の商品配送料金を無料から350円に引き上げると発表した。今回はAmazonの送料改定の背景と分析を行なってみたい。

増え続ける売り上げと不採算取引

今回の送料改定の背景は企業収益の改善のために「不採算な取引の撤廃」を目的とした動きというのがもっとも大きなウェートを占めているようだ。

米・NASDAQ市場のAmazon.com Inc における、直近12カ月データを見てみよう。ここでもっとも注目したいのは一株あたりの利益(EPS)だ。2016年4月現在公開されている2015年度の通期決算書によると、一株あたりの利益は1.28米ドル。1ドル110円で換算するとわずか140.8円となる。

また前年2014年と前々年度の2013年の通期決算書も紐解いてみると、2014年度EPSが-0.52米ドル、2013年度EPSが0.6米ドルといずれも低水準を推移している形だ。

EPSと平行して売上高も比較していきたい。決算情報によると2015年度の通年売上高は1070億600万ドル、2014年度が889億8800万ドル、2013年度が744億5200万ドルと順調に上昇しており、これは利用者数および販売数が増えているということが示されている。

利用者数が増える中でAmazonの頭を悩ませるのがいわゆる「低価格ユーザーの不採算取引」だ。いままでは全ての商品の送料を「無料」としていたわけだが、当然ユーザーに商品を発送する際にはコストが発生する。

この発送コストは最終的にAmazonが負担している形となるわけだが、仮に今回決定した「2000円未満の買い物」に対して送料を負担すると、その取引はAmazonにとって赤字になるはずだ。

利益率自体は商品によってまちまちだろうが、仮に送料を今回決定した350円とすると2000円の取引だと最低でも利益率が17.5%、600円ほどのコミック単行本だと約58.3%以上の利益率が必要となってくることとなり、こういった取引がAmazonの収益を阻害している形である(書籍は2000円未満でも送料無料)。さらに発送にとられる人員やパッケージ(段ボール箱・封筒・保護ビニールなど)の費用を考えると赤字になることは明白だ。

今回の送料改定によりこういった不採算取引を削減し、企業収益をあげるのが目的であると数字の面から分析できる。これにより低水準で推移しているEPSを改善し、収益力をあげることで企業価値を高めていく方針となるだろう。