R32GT-R,縁石走り
日本一速い男の「縁石走り」(画像=日産 Webサイトより)

日経平均株価が史上最高値となる3万8957円を記録した1989年。バブル景気の最高潮にあったこの年は、日本のモータリゼーションの黄金期でもあった。ホンダNSX、トヨタ・セルシオ、ユーノス・ロードスターなど各社とも個性を競い合うように次々とニューモデルを発表した。

そうしたなか、日産は1990年代までに技術力で世界一を目指すべく策定した「901運動」の集大成を投入する。先代KPGC110型の生産終了から16年ぶりに復活したそのモデルこそが、「スカイライン R32GT-R」だ。

伝説の『R』はここから始まった

R32GT-Rは、当時の全日本ツーリングカー選手権(JTC)の規定である「グループA」で、勝ち続けるために開発されたモデルでもある。

グループAとは、FISA(国際自動車スポーツ連盟)によって定められたレギュレーションの一つで、JTCでは1985年から1993年まで採用された。一般の市販車に改造を施したものに限定され、連続する12カ月間に5000台以上(当時)生産し、座席が4つ以上の車両が公認の対象となる。

1990年、R32はそのJTC第1戦・西日本サーキットでデビューを果たす。16年ぶりの復活となったGT-Rを見るために詰め掛けた観衆が見守るなか、決勝に出場したR32は2台。鈴木利男と星野一義のカルソニックスカイライン、長谷見昌弘とアンデルス・オロフソンのリーボックスカイラインである。

結果は星野組のカルソニックスカイラインが、レースの4分の1を消化した時点で全てのマシンを周回遅れにする圧勝だった。R32はその後もシリーズ全戦でポール・トゥ・ウィンを飾り、グループAカテゴリーが終了する1993年まで29連勝という金字塔を打ち立てる。

R32の圧倒的な性能は、スピードはもちろんのことコーナーリングにもはっきりと見られた。当時日本一速い男と呼ばれた星野のイン側のタイヤを浮かせながらコーナーを駆け抜ける「縁石走り」はカルソニックスカイラインの代名詞となる。日本一速い男は、R32のポテンシャルを最大限に引き出せる男でもあった。R32といえばカルソニックスカイライン、カルソニックスカイラインといえば「縁石走り」、縁石走りといえば星野というイメージが広く浸透する。

24耐で2位以下を20周引き離す

R32GT-Rは海外のレースにも数多く参戦した。そのなかでも特筆すべきは、ベルギーで開催されるスパ・フランコルシャン24時間レースである。スパ・フランコルシャンは、フランスのル・マン24時間レース、米国のデイトナ24時間レースとともに「世界3大耐久レース」の一つに数えられるが、両者との違いは市販車ベースの改造車中心のレースであることだ。

1990年、R32はこのレースで「グループN」の表彰台を独占する。「グループN」とは一般の市販車をレース用に改造する点ではグループAと同じだが、改造範囲がより狭く限定されるのが特徴である。つまり、ベースとなる市販車そのものの性能の高さで勝負する意味合いが強く、ここに日産の「901運動」は結実する。

R32の快進撃はとどまることを知らない。1991年には前年に続きグループN優勝に加え、グループAでも服部尚貴、アンデルス・オロフソン、デビッド・ブラバムのゼクセル・スカイラインで2位を20周も引き離して独走体勢に入り、総合優勝を果たす。『R』のエンブレムが最も輝いた瞬間であった。

本物の価値は色あせない

日本のモータリゼーションの黄金期に誕生した「スカイライン R32GT-R」。間もなく日本経済はバブル崩壊の闇が急速に広がり、失われた20年に突入することになる。星野の「縁石走り」に熱狂したあの頃、スパ・フランコルシャンで総合優勝を果たしたあの時、その後の日産の経営危機を誰が想像できただろうか。

だが、近年は 中古車市場でR32の価格が高騰 し、25年ルールが解除された米国ではユーザーからの引き合いが強まっているという。どんなに時代が移り変わろうとも、本物の価値は決して色あせることはない。「スカイライン R32GT-R」が打ち立てた金字塔は、今後も伝説の『R』として永く語り継がれるであろう。(モータージャーナリスト 高橋大介)

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