(4) ドローンは触れてみないとその可能性は分からない
ドローンの魅力とは何だろうか。クリス・アンダーソン氏がWIREDの2012年7月号に掲載した「HERE COMES THE DRONE 我が愛しのドローン」では、以下の様に描かれている。「パソコンが発売された際、その一般の人々が暮らしの中でパソコンの使い道を見つけ出していった。そしてより良い答えが出てくる様になった。(中略)パーソナルドローンについても同じことが言える」。
ドローンの魅力は、パソコンやスマホと同じ様に生活や仕事の中で次々と見出されていくと言えるかもしれない。パソコンやスマホに可能性や利便性と表裏一体で多くのリスクがある様に、ドローンにも同じことが言えるがドローンの方がずっと厄介だ。
例えば、物理的に物を運ぶことができるため危険物の運搬リスクもあるし、墜落に伴うリスクもある。また空からの撮影に対するプライバシーの保護リスクもあるだろう。手軽に購入できるツールとしてはパソコンやスマホとは全然違う。そのため規制やルールの整備は不可欠であるのは言わずもがなで、将来は運転免許が必要ということもあるかもしれない。
今年3月15日、世界最大規模のドローンメーカーDJI社から最新鋭のパーソナルドローン「Phantom4」が発売された。
DJI社が2012年に初代Phantomの発売以来、Phantom2、Phantom2 Vison+、Phantom3と毎年新しい機能が追加され、ついに4代目の登場だ。詳細の機能は他サイトに譲るが、障害物自動回避機能や人物を自動認識して追尾する機能など、ドローンで重要なポイントの一つである「自律性」が高まっていて、これまでのドローンよりも一層ドローンに近づいた。
「Phantom4」の操作性とコストパフォーマンスの高さは、おもちゃのラジコンの域を大きく超えている。長年趣味でラジコンをいじってきたが、あまりにも簡単に扱うことができるため、拍子抜けするほどだ。
こんな製品を誰もがネットからワンクリックで買うことができ、箱から開けたらすぐにマニュアルもロクに見ずに空中で浮遊させ、とても綺麗な映像の空撮ができるというのは個人的には驚くばかりだ。
DJI社の企業価値が1兆円を超えた理由は、パーソナルドローンの傑作と言われる「Phantom」シリーズの成功だけではない。
これまで紹介してきた様に、産業としての裾野の広さにこそ本質がある。前述のDRONEII.comがドローン産業のプレーヤーを一覧にして無料公開している。参入プレーヤーは、マニュファクチャラー(ハード製造事業者)だけでなく、ソフトウェア、システムプロバイダー、トレーニング、メディア、マーケットプレイス、インシュアランス(保険)などあらゆる業界からの参入がある。
ドローン産業という新たなビジネス生態系ができつつあるということだ。
あらゆるモノがインターネットにつながる社会、俗称:IoT社会は、もうすぐ目の前までやってきている。自分の生活空間を見回しても、インターネットにつながっている機械は、すでに10を軽く超えているが、それが5年後には数十は数えられる様になるだろう。
必ず訪れるIoT社会の中で、ドローンは私たちの生活にどんな役割を担っているのだろうか。そう考えるとワクワクしてならない。
高橋広嗣(たかはしひろつぐ)
フィンチジャパン代表取締役。早稲田大学大学院修了後、野村総合研究所経営コンサルティング部入社。経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルタントとして活躍。
2006年「もうひとつの、商品開発チーム」というスローガンを掲げて、国内では数少ない事業・商品開発に特化したコンサルティング会社『フィンチジャパン』を設立。
著書に『半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法』がある。 昨年には新たにコンテンツマーケティング事業を立ち上げ、耳×ヘルスケアに特化した自社メディア「
耳福庵
」の運営も行っている。