インフレ下ではお金を動かす人が得

マイナス金利でも銀行の経営基盤にはほとんど影響ありませんが、預金金利は下がって利息がつきづらくなります。ただ、もともと預金金利は0.0数%で、ATM手数料でマイナスになってしまうくらいの水準でした。それが0.00数%になったところで、実質的には変わらないでしょう。

一方、ローンの金利も下がります。これは現役世代ほど有利。シニア世代はほとんどが住宅ローンを支払い終わっていますが、現役世代は住宅や教育、自動車など、お金を借りる機会が多く、そのぶん恩恵も大きいのです。

アベノミクスはデフレ脱却を目指した経済政策で、今回のマイナス金利導入もその一環です。お金を積極的に動かす人、経済的に頑張っている人がより恩恵を受けられ、ひいてはそれが日本経済にも良い影響を及ぼす仕組みとも言えます。なので、少しでも資産があるなら、動かしたほうが、個人としても社会としても良い循環を生むはずです。

私は、少なくとも黒田総裁の任期が終わる2018年3月まではマイナス金利が継続されると考えています。つまり、当面は投資に有利な環境とも言えます。さらに言うと、消費税増税を先延ばしにしない限りインフレ目標2.0%は達成できないとは思いますが、インフレヘッジの観点からも、株や外債、不動産などに投資をすることは意味があります。

日本はまだデフレの渦中にあるため、今後、さらなる量的質的金融緩和やマイナス金利が進んでいく可能性はあります。ビジネスマンは、来るべきインフレに備え、この機会に資産運用を考えるといいかもしれません。

永濱利廣(ながはま・としひろ)第一生命経済研究所 首席エコノミスト
1971 年、栃木県生まれ。95 年、早稲田大学理工学部卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険㈱)入社。2005 年、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2000年より、第一生命経済研究所経済調査部、16 年より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、一橋大学大学院商学研究科非常勤講師などを務める他、情報番組のコメンテーターとしても活躍。著書に、『日本経済黄金期前夜』(東洋経済新報社)など多数。(取材・構成:村上敬)(『 The 21 online 』2016年5月号より)

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