ビッグデータやAI、ロボットに次いで、その将来性を期待されている技術に「チャットボット」がある。今年に入って、大手ソーシャルメディア企業が採用を発表するなど、各方面から大きな関心を集めている。

その一つが、女子高生AI「りんな」だ。LINEを使ったチャットに女子高生のようにリプライをしてくれるAIだとされており、いわゆる「チャットボット」だ。コミュニケ―ションプラットフォームを運営するLINEと、マイクロソフトが共同で運用しており、「女子高生らしい軽いノリ」や「Appleを評価する発言を上手く避ける」といった、オモシロさからも人気上昇中だ。

「チャットボット」とはそもそも何か?

「チャットボット」とは、人と人間の言語でコミュニケーションを行い情報をやり取りするもので、会話の目標を持たない「非タスク志向型対話システム」を指している。

より分かり易く言えば、日本語や英語を使って、例えば天気予報について尋ねると、パソコンやスマートフォンが内容を理解して、あたかも人と会話をしているかのように、答えてくれるものだ。

少しだけ、チャットボットの歴史を振り返ってみよう。同技術の発端はそもそも、1960年代に登場した、自然言語を用いたデータベース検索だと言われている。その後、音声による対話的な操作ができるようになり、カーナビゲーションシステムなどの上で1990年代に実用化された。

また1990年代後半以降には、インターネットの普及に伴い、聴覚、視覚など、複数のコミュニケーションの方法を利用して、システムと双方向の遣り取りを実現する「マルチモーダル・インターフェイス」の開発が進み、電子掲示板やオンラインチャットルームに「チャットボット」機能が搭載されるようになった。

さらに2000年代後半以降、スマートフォンの普及とともに、インターネット上でキャラクターとテキストでの対話ができる仕組みから、より人間的なシステムへと進化している。それが現状だと言えそうだ。

FacebookやMicrosoftも取り組む「チャットボット」開発

チャットボットへアツい視線を注ぐのは、しかし、ベンチャーやスタートアップといったリスクを取って、新しい取り組みを進める会社だけではない。今やITの巨人達と言ってもいい、FacebookやMicrosoftなども開発を推進しているのだ。

例えば、Facebookは2016年4月の開発者向けカンファレンスで、メッセージングアプリにチャットボット機能「Bots for Messenger」を付加できる新たな「フェイスブック・メッセンジャー・プラットフォーム」を発表。日本やアジアで人気を拡大しているLINEも同月に、LINE上で動作するチャットボット専用のAPIである「LINE BOT API」を公開しており、チャットボットとも親和性の高いメッセージツールでの導入が進んでいる様子だ。

さらに、マイクロソフトは、2016年3月の開発者向けカンファレンスで、同社のパーソナルアシスタント「Cortana」の機能をチャットボットに搭載できる「Cortana Intelligence Suite」や、開発プラットフォームの「Microsoft Bot Framework」を発表した。

また5月には、Googleが、同社の開発者向けカンファレンス「Google I/O」で、人工知能(AI)ベースのアシスタントボットを搭載したチャットアプリケーションである「Allo」を発表しており、今年の夏頃にはサービスを開始する予定だ。

ワンストップでチャットボットを利用した独自サービスを開発するのではなく、APIや開発基盤をサードパーティのスタートアップ企業に提供しながら、エコシステム全体としての技術適用、事業化を推進するモデルを採用している点が特徴だといえるだろう。