地方自治体の動き
受け入れ側である地方自治体は、各県で農業法人立ち上げの動きを活発化させています。「農家」とは農業を家業としている人々のことをいい、「農業法人」とは稲作のような土地利用型農業をはじめ、施設園芸、畜産など、農業を営む法人の総称のことをいいます。
農業法人は、制度の面から二つの形態に分かれます。一つめは、会社の形態をとる「会社法人」です。営利を目的とする法人で、株式会社などが代表例としてあげられます。二つめは、組合の形態をとる「農事組合法人」です。農業経営等を法人化するため農業独特のものとして設けられたものであり、協同組織的なカラーが強いのです。
農業法人が増えたことで、以前よりはるかに若者が農業に「就職」しやすくなっています。農業に就職することを「就農」といい、農業法人に就職する「雇用就農」と、自身が経営者となる「独立就農」があります。2014年度に農業法人などに雇用就農した人は東北6県の合計で591人と、前年度より96人増えました。内訳は農家出身者ではなく、会社員のような「就職」による就農が全体の42%を占めているのです。これは受け入れ側が法人化することで、福利厚生など労働環境を整備するケースが増えたことも大きく作用しているでしょう。
また、各県とも雇用を増やすために努力をしています。福島県の場合、農業法人が求人を増やしていますし、研修などの助成事業や県の緊急雇用対策を活用しています。また同県は、人口減対策の一つとして新規就農を柱に据えており、農業関連の職業の紹介も無料で行っています。
農業という新しい可能性に賭ける生き方もあり
ITが全盛の世の中に若者が農業を始める理由は、食の安全に対する意識の高まりだけではありません。農林水産省が行った調査によると、都市住民は農村について「自然が多く安らぎが感じられる」「住宅・土地の価格が安い」「空気がきれい」といったイメージを持っていることがわかりました(農林水産省『農村に関する意識調査(2011年)』)。その他内閣府の調査によると、都市住民の3割が農山漁村地域へ定住してみたいと答えています(内閣府『農山漁村に関する世論調査(2014年)』)。特に、20歳代男性の関心が高く新たな生活スタイルを求めて都市と農村を行き来する「田園回帰」の動きや、60歳代以上の男性が定年退職後の定住志向があるようです。
今、都会を思い切って離れて地方で農業を始めることは、大きな決断力を必要とするかもしれません。しかし、自治体などの受け入れ側の態勢も、かつてないほど充実しています。どのようなサポートがあるのかを知ることで、地方の意外な一面が見えてくるのではないでしょうか。(提供: nezas )
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